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藤原歌劇団 オペラ「カルメル会修道女の対話」 [オペラぁ!]

carmelites20omot.jpgプーランクの「カルメル会修道女の対話」は、
18世紀のパリ近郊、
フランス革命から恐怖政治に至る、
激動の世の中に翻弄される修道女の話。

史実に基づいたストーリーで、
プーランクの緊迫感溢れる音楽が、
救いようのない悲劇を、
リアルに演出した作品です。

上演機会の少ない作品ですが、
去年の3月には、
新国立劇場の研修所公演があり、
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2009-03-14
1年を待たずに今回の上演。
藤原歌劇団の公演は、
フランスオペラで定評のある、
アラン・ギンガルが指揮、
プーランクの音楽表現に期待が高まりました。

色彩がなく照明も控えな舞台は、
暗くて重いストーリーを忠実になぞった演出で、
シーンが細かく切り替わる舞台を、
短冊形の簡単な幕の裏で瞬時に転回させ音楽の流れを止めません。
16人の修道女が断頭台の露と消える幕切れへ向けて、
徐々に張り詰めていく音楽がその伏線となる旋律をちりばめながら、
緊張感を高めていきますが、その緊張が途切れないところは、
アラン・ギンガルの指揮によるところも多いようです。

演出方法が気になる最後の断頭台シーン、
舞台の中央に置かれた階段を奥に上り切ったところにギロチンがそびえています。
修道女はひとりづつ現れ階段に背を向け横一列になってひざまずき、
刃が落ちる音と同時に1人づつ前に突っ伏していきますが、
階段上のギロチンは落ちる事なく、
史実の写真や挿絵などが背景に映し出されます。
現実悲劇のリアリティーを表現するもののようでしたが、
そこまでする必要性を感じられませんでした。
そして最後、主人公のブランシュの時には階段上のギロチンが落ちて幕、
拍手をするのがためらわれるほど、
何ともやりきれない幕切れが強烈な余韻を残します。

女性歌手総動員的登場人物は、
特に独唱で見せ場のようなところがない分表現が難しいところですが、
クロワシー修道院長やマザー・マリーなど低音パートが充実、
そしてやはりこのオペラの見所、
合唱による聖歌の繊細で美しい響きはグッとくるものがありました。

さて今回のオペラ、
プーランクが築いた密室でギンガルの巧みな指先に導かれ、
観客は2時間に及ぶ前戯の末に、
残酷な歴史にうしろめたさを感じながらも、
恍惚の境地に達したのでした。


2010年2月6日 藤原歌劇団
オペラ「カルメル会修道女の対話」
全3幕 プーランク作曲
Francis Poulenc : Dialogues des
Carmelites

会場:東京文化会館

指揮:アラン・ギンガル(Alain Guingal)
演出:松本 重孝
美術:荒田良
衣装:前岡直子
照明:沢田祐二

出演 
ド・ラ・フォルス侯爵:折江忠道  
ブランシュ・ド・ラ・フォルス:出口 正子  
騎士フォルス:中鉢聡  
クロワシー修道院長:森山京子  
リドワーヌ修道院長:佐藤ひさら  
マザー・マリー:鳥木弥生  
コンスタンス修道女:佐藤美枝子   
マザー・ジャンヌ:河野めぐみ   
マティルド修道女:向野由美子   
司祭:小宮一浩   
第1人民委員:松浦健   
第2人民委員:豊島雄一

ジャヴリノ医師:柿沼伸美
役人:羽渕浩樹
ティエリー看守:坂本伸司
マザー・ジェラール:家田紀子
クレール修道女:吉村恵
アントワーヌ修道女:立川かずさ
カトリーヌ修道女:清水理恵
フェリシティ修道女:村瀬美和
ジェルトリュード修道女:安達さおり
アリース修道女:宮本彩音
ヴァランティーヌ修道女:渡辺ローザ
アン修道女:吉田郁恵
マルタ修道女:山崎知子
シャルレ修道女:但馬由香

合唱:藤原歌劇団合唱部

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団


タグ:プーランク
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