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新国立劇場 オペラ「ジークフリート」 [オペラぁ!]

ko_20001669_chirashi.jpgワーグナーの楽劇「ニーべルングの指環」4部作の3作目、
「ワルキューレ」に続く本作「ジークフリート」とは、
ワーグナーが自分の息子にも付けた若き勇者の名前。
この新国立劇場のプロダクションは、
キース・ウォーナーの演出。
2003年の初演以来7年ぶりの再演ながら、
全く色あせないスタイリッシュな舞台の初日。
昨年4月の「ワルキューレ」公演以降、
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2009-04-10
10ヶ月ぶりに、
奇術師ウォーナーが展開する「リング」の世界。
最終章の「神々の黄昏」への期待も高まる、
充実した舞台になっていました。

第1幕、
舞台手前に剣を鍛造する赤い金床が象徴的に置かれ、
真っ暗な主舞台にはぽっかり大きな穴が開いています。
ちなみに「ワルキューレ」では霊剣ノートゥングが象徴になっていました。
序曲に合わせて奈落からせり上がってくる舞台は孤児ジークフリートを育てるミーメの家、
ポップでおしゃれなメゾネットの家は家電も揃って、
クローゼットには着替えがいっぱい。
ダイナミックな演出で無骨な装置の予想に反して、
ポップな空間が展開します。
上のちらしはその写真ですが「ミーメハイム」と書いてあります。
この舞台装置、「ラインの黄金」では、
ミーメらニーベルング族が住む地底の、
装飾もない地上を支える柱が林立する殺風景なシーンとして使われていました。
また、
湾曲した舞台額縁は、
主神ヴォータンがこの4部作を「世界の没落」の映像として撮影したフィルムを、
スクリーンに映しているという設定です。

ウォーナーの舞台演出の発想はあえて短絡的。
ミーメは小人→かわいい→ラブリーな部屋、
ジークフリート→若きヒーロー+頭文字が「S」→スーパーマンのTシャツが衣装、
ブリュンヒルデの眠り→ベッド、
馬→木馬、TVの映像で、
などなど、思いつき的発想で新鮮味のある舞台効果をあげています。

登場人物は総勢8人、合唱もありません。
でもそのメインの男3役ジークフリート、ミーメ、さすらい人が揃って上手い、
特にミーメ役のヴォルフガング・シュミット。
特徴のあるエキセントリックな声にその体形を見方につけて、
キャラクターを際立たせていました。
クリスティアン・フランツが演じるジークフリート役は恐るべき難役、
全幕ほぼ出ずっぱりで暗記の苦手な人にはまず無理。
フランツは通して張りのある中低音から繊細な高音までをコントロール、
終幕では幕が降りたら完全燃焼で倒れるのではないかと心配してしまう程でした。
さすらい人に扮したヴォータン役のユッカ・ラジライネンも聴き応え十分でしたが、
手に持つ槍を愛しい孫のジークフリートの剣に折られるシーンで、
剣を振る下ろされる前に槍が折れてしまい、
「これじゃ、あんた頭真っ二つだよ。」みたいな感じに。
その後の逞しくなった孫を想い、弦楽が奏でるしんみりした演奏が、
何とも白けた感じになってしまいました。

今回の公演は午後2時から8時まで、
約6時間を新国立劇場に軟禁状態、
途中50分と45分のインターバルを挟みましたが、
さすがに2度目の休憩では時間をもて遊びました。
この時間の長さは観客のため?オーケストラのため?
それとも出ずっぱりのジークフリートの喉をいたわるため?


2010年2月11日 新国立劇場 楽劇「ニーべルングの指環」第2日「ジークフリート」
Richard Wagner:"Der Ring des Nibelungen" Zweiter Tag Siegfried

リヒャルト・ワーグナー / 全3幕

スタッフ
【指 揮】ダン・エッティンガー(Dan Ettinger)

<初演スタッフ>
【演 出】キース・ウォーナー (Keith Warner)
【装置・衣裳】デヴィッド・フィールディング (David Fielding)
【照 明】ヴォルフガング・ゲッベル (Wolfgang Göbbel)
【振 付】クレア・グラスキン (Claire Glaskin)

キャスト
【ジークフリート】クリスティアン・フランツ (Christian Franz)
【ミーメ】ヴォルフガング・シュミット (Wolfgang Schmidt)
【さすらい人】ユッカ・ラジライネン (Jukka Rasilainen)
【アルベリヒ】ユルゲン・リン (Jürgen Linn)
【ファフナー】妻屋秀和 (Tsumaya Hidekazu)
【エルダ】シモーネ・シュレーダー (Simone Schröder)
【ブリュンヒルデ】イレーネ・テオリン (Iréne Theorin)
【森の小鳥】安井陽子 (Yasui Yoko)

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団 (Tokyo Philharmonic Orchestra)

新国立劇場「ニーベルングの指環」公演レビュー
「ラインの黄金」
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2009-03-20
「ワルキューレ」
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2009-04-10
「ジークフリート」
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2010-02-12
「神々の黄昏」
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2010-03-20


タグ:ワーグナー
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