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神奈川県民ホール オペラ「ラ・ボエーム」 [オペラぁ!]

10037801f1.jpg神奈川県民ホール会館35周年記念の「ラ・ボエーム」は、
アンドレアス・ホモキの演出。
彼が得意とする素材を極限に絞ったミニマルステージは、
開演前から幕が上がった何もない舞台に、
雪が降り続け、
これから始まる冬の物語へ、
観客を誘います。
指揮者の挨拶もなく、
舞台が始まるケースはありますが、
オーケストラの音合わせから、
いきなり演奏が始まり、
その後客席の照明が落ちるという、
意表をついたオープニング。

カルチェラタン、安アパートの屋根裏部屋のはずの舞台は、
ただ雪の降るステージ。
歌詞には階段も出てきますから、
ここは丘の上の公園で彼らは路上生活者か、
ベノアに地代を払っているようなので、空き地を借りているのでしょうか?
野次馬的エキストラもいます。
画家のマルチェッロは、
バケツの絵具を壁にぶちまける抽象表現アーティスト。
詩人のロドルフォは原稿をストーブでなく、ドラムカンにくべて暖を取ります。
多少無理はあるものの、
舞台転回がなく一貫した枠組みで、
全4幕を突っ走ろうとするホモキの演出意図は理解出来ます。

第2幕カフェ・モミュスのシーンでは、
巨大なモミの木に装飾が施され、
オモチャ売りのパルピニョールはサンタクロース姿、
クリスマスムードが高まります、
12月の上演だったらもっと盛り上がったと思いますが。

軍隊の行進曲に合わせて大騒ぎとなる2幕の幕切れ、
買物に行かされたアルチンドロがカフェに戻って伝票を渡され、
請求額を見てびっくりする場面のストップモーションで幕。
そのまま全く赴きの違う第3幕に入ります。

第4幕では、
屋根裏部屋で貧乏アーティスト達が空想を交えてはしゃぐシーンでは、
その夢が現実になっていて、
身なりもよくなり、クロスを掛けたテーブルに贅沢な料理が並んでいます。
ロドルフォが書いた作品が大成功したという演出で、
給女がサインを求めて来ます。
屋根裏部屋で「ペンがない。」の歌詞は、
サインする「ペンがない。」に読み替えられています。

そこまで成功したロドルフォでしたが、
やはり最後にミミを助ける事は出来ませんでした。
それどころか、
ミミの息が切れた事が分かると、
袖に駆け出してしまったのはちょっと可哀そうじゃないですか?

そんな新鮮味のある演出の名作ラ・ボエームでしたが、
歌手では、
ミミを歌った浜田理恵が飛び抜けていました。
トゥーランドットのリュー役でもそうでしたが、
この人、けなげな女役が心情的にいっそう観客を引き付けます。
安定した中低音から繊細なピアニッシモまで、
素晴らしい歌声が際立っていました。


2010年3月27日 オペラ「ラ・ボエーム」
神奈川県民ホール・びわ湖ホール共同制作 東京二期会共催
プッチーニ作曲 歌劇「ラ・ボエーム」La Boheme 
 
指揮 : 沼尻竜典
演出 : アンドレアス・ホモキ
装置 : ハルトムート・メイヤー
衣装 : メヒトヒルト・ザイペル
照明 : フランク・エヴィン
キャスト
ミミ : 浜田理恵  
ロドルフォ : 志田雄啓  
ムゼッタ : 中嶋彰子 
マルチェッロ : 宮本益光  
ショナール : 井原秀人  
コッリーネ : 片桐直樹   
アルチンドロ : 晴雅彦 
パルピニョール : 大野光彦
ブノア : 鹿野由之  
             
合 唱 : びわ湖ホール声楽アンサンブル、二期会合唱団
児童合唱 : 神奈川県立弥栄高等学校合唱部
管弦楽 : 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

タグ:プッチーニ
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コメント 1

Paco

私も浜田さんはバタフライで見ましたが、
けなげな役があうって言うのは納得しますね。
ヴェルディだったらどうなるのかな。

すごい数のオペラ見られていますね。
いいなぁ、東京って。
少しずつチェックさせてもらいますね。
by Paco (2010-03-28 18:25) 

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