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岩手県立美術館「ハンス・コパー展」 [アートっ!]

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「ハンス・コパー展」を開催中の岩手県立美術館は、
岩手県、JR盛岡駅から車で10分程の所にありますが、
氷点下に冷え込む時期で周辺に建物がまばらなら、人影もまばら、
一面雪に覆われ、どこまでが美術館の敷地なのかさえよく分かりません。

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ラウンジから外を眺めても屋外展示作品があるのかどうかも不明、
正面のなだらかな丘では、
子供たちが橇遊びに興じています。

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建物の内部は大きな吹抜けのアーケードを中心に、
左が雪景色の屋外、右の1階が企画展示室、2階が常設展示室になっていて、
企画展示を示すバナーの下にはマイヨールの彫刻が置かれています。

「ハンス・コパー展」の展示内容は東京展とほぼ同じ、↓レビューはこちら、
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2010-06-26
会場が広いのでゆったりと並べられていますが、
コパーの作品には、そのボリュームに負けない存在感を感じます。

↓1960年代、ディグズウェルの工房に並べられたコパーの作品たち
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当日は、講演会「新春放談-と・う・げ・い」が企画されていました。
1:「作る喜び・創作の現場から」
 講師:久世建二氏(金沢美術工芸大学学長・陶芸家)
2:「形のいろいろ-ハンス・コパー作品の特質」 
 講師:金子賢治氏(茨城県陶芸美術館館長)
3:久世建二氏と金子賢治氏による対談
日時:2011年1月9日[日] 13:30-16:00 場所:ホール

約40年間にわたって土と向き合ってきた久世氏は、
道具としての陶芸から離れた創作活動を続けており、
調和の中に独自の毒を盛り込む事で審美性のある創造物が出来るのだと。

また金子氏は、
ロンドン近郊で陶作を続けたハンス・コパーの独創的な造形の源を、
大英博物館に収蔵される古代ギリシャの土器に見つけられると、
言及しました。

対談では美術館のスタッフを交え、
コパーの作品が発する神聖とも言えるオーラに、
制作への強い想いと情熱、そして彼の生き様が感じられる。
というような話になりました。


その後にまわった同美術館の常設展は、
岩手ゆかりの作家、萬鐵五郎、松本俊介、舟越保武を中心に壮大なコレクションを展示。
しかも、広い会場で見ている人よりも監視員の方が多いという贅沢さ。
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独創的な木彫りが印象的な舟越桂の作品もひとつ、
「冬の会話」がありました。
着彩された楠の木に、
後ろ頭から大理石の目玉を挿入する手法で、
作られた独特の作風で、
強烈な個性を発揮しています。

彼も岩手出身の作家との事ですが、
その父親、舟越保武もまた、
県立美術館で1部屋与えられる程、
有名な彫刻家だったとは初めて知りました。


そして、その作品の中で特に見入ってしまったのは、
長崎26殉教者記念像のうちの4体で、
「聖ヨアキム・サカキバラ」「聖フランシスコ・デ・サン・ミゲル」、
「聖フェリッペ・デヘスス」「聖フランシス・ブランコ」。
等身大の大きさで高さ180cm、壁に並べて掛けられていましたが、
同じように口を半開きにして手をあわせ、宙に浮いたように足の先を伸ばしているものの、
顔も表情も着ているものも教徒服から和服までさまざま。
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これは、1597年豊臣秀吉によるキリスト教弾圧の犠牲となり、
殉教した人々を追悼する作品で、子供も含む像26体が長崎にあり、
ここにあるのは、同じ型を使って合成樹脂で制作されたもので、
同じカトリック教徒である作者が、
殉教者が祈りを奉げながら昇天する様子をイメージして形作ったものものだそうですが、
理屈抜きで、
圧倒的な迫力を持って見る者に迫ってくるものがあります。

彫刻でも陶芸でも、
それを作らずにはおられない、
作者の創作を駆り立てる強い想いが、
より次元の高い作品へと導いているように感じました。


岩手県立美術館 「ハンス・コパー展」― 20世紀陶芸の革新
http://www.ima.or.jp/

会期 : 2010年12月4日[土]-2011年2月13日[日]
会場 : 企画展示室
開館時間 : 9:30-18:00
休館日 : 月曜日、年末年始、1月11日
主催 : 岩手県立美術館、朝日新聞盛岡総局、岩手朝日テレビ
後援 : ブリティッシュカウンシル、岩手県商工会議所連合会、岩手県芸術文化協会、
岩手日報社、NHK盛岡放送局、IBC岩手放送、テレビ岩手、めんこいテレビ、エフエム岩手、
岩手ケーブルテレビジョン、ラヂオもりおか、マ・シェリ、情報紙 游悠
協力 : 日本航空
企画協力 : ヒュース・テン
出品点数 : イギリスの主要なコレクター、美術館、国内の所蔵家、
美術館等から借用する約110点に加えて、
コパーの芸術との深い関係を示唆するルーシー・リー作品約20点を展示
観覧料 : 一般800円 高校・学生500円 小・中学生300円


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TaekoLovesParis

この美術館は、建物も環境もいいですね。でも、冬は、あたり一面、雪なようですね。私も常設展はどの部屋も感心して見ました。舟越保武さんを存じ上げていたので、殉教像には心打たれました。
by TaekoLovesParis (2011-01-14 20:47) 

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