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東京二期会 オペラ「蝶々夫人」 [オペラぁ!]

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東京二期会の「蝶々夫人」公演は宮本亜門の演出で、ザクセン州立歌劇場(ゼンパーオーパー・ドレスデン)、デンマーク王立歌劇場およびサンフランシスコ・オペラとの共同制作公演。

ちらしでは「日本から世界に向けて発信する!」と書いてありましたが、ほぼオールジャパンの素晴らしい舞台でした。
そして日本発のオペラとして世界の人に観てもらいたい、特に、日本に来ている人たちに是非観てもらいたいプロダクションです。

宮本亜門の演出は、物語のエンディングから30年後、病床のピンカートンが息子に、本当の母親である蝶々夫人の事を手紙で伝え、物語を回想するところを終始息子が見ている、という演出。
3幕あるそれぞれの幕開けの序曲で病室での黙劇が展開され字幕の説明が付きます。

舞台を長大なレースのカーテンで区切り、カーテンでシーンを絡め取るようにして舞台が転回してきます。
幕開け、長崎の丘の上の見晴らしの良い日本家屋を借りる事にしたピンカートンのシーン、この演出ではオフィスで青写真を眺めながら仲介人ゴローから家の説明を受けます。

大掛かりな装置はないにも係わらず、奥舞台までたっぷりと空間を使っていますが、そこに高田賢三の鮮やかな衣装がファッションショーさながらに華やかに舞います。
蝶々夫人は結婚衣装の白無垢ですが、ベールをかぶって羽織の下には和洋折衷の着物、取り巻きの下女たちは鮮やかなピンクの着物など、日本の伝統美を新鮮に、そして魅力的に表現しています。

蝶々夫人役はソプラノの森谷真理、第1幕では15歳の恋する少女、第2幕からは夫の帰りを待つ18歳の気丈な女を表現、特に第2幕からは白のワンピースにストレートの黒髪を揺らしながら、舞台軽やかにを駆けまわります、ちらしの写真にもありましたが、高田賢三のモデルをしていた山口小夜子をイメージしているようです。ふくらみのある歌声で新しい蝶々夫人像を描いていました。

ピンカートン役はテノールの樋口達也。自由で幸福に満ちた軽薄短小なヤンキーを高らかと声にして歌いました。

シャ―プレスはベテランの黒田博、この役は威厳がないと舞台の魅力半減になってしまいますが、十分な貫禄です。

第2幕では、その後ピンカートンは中国へ出征し怪我で足が不自由になり、あんまり幸福な人生でもなかったと長崎時代を思い起こすシーンも挿入され、蝶々夫人贔屓の演出になっていますが、幕切れではピンカートンが病床で事切れ、天国から迎えに来た蝶々夫人と手を取り合う、という、何と悲劇がハッピーエンドに置き換えられていました。

アンドレア・バッティストーニの感情を込めた迫力ある指揮で、舞台は一層盛り上がりました。

こういう舞台は日本での限定上演にして、世界中からこの舞台を観るためにひとが集まって来るようになるといいなぁと感じました。
空席が結構あったのが残念です。


2019年10月3日 東京二期会 オペラ「蝶々夫人」

スタッフ
指揮:アンドレア・バッティストーニ
演出:宮本亞門
装置:ボリス・クドルチカ
衣裳:髙田賢三
美粧:柘植伊佐夫
照明:マルク・ハインツ
映像:バルテック・マシス
 
合唱指揮:河原哲也
演出助手:澤田康子 島田彌六
舞台監督:村田健輔
公演監督:大島幾雄
 
キャスト
蝶々夫人 : 森谷真理
スズキ : 藤井麻美
ケート : 成田伊美
ピンカートン : 樋口達哉
シャープレス : 黒田博
ゴロー : 萩原 潤
ヤマドリ : 小林由樹
ボンゾ : 志村文彦
 神官 : 香月 健
青年 : 牧田哲也
 
合唱: 二期会合唱団
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団

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