映画 「いずれの森か青き海」 [映画ぁ!]
先日、映画監督の瀬木直貴さんにお目に掛かる機会があり、
初めてこの映画の存在を知りました。
映画監督とは思えない気さくな人柄の方でしたが、
その作品は詩情たっぷりで、
普段使ってない感覚をくすぐられる感じの、
味わい深い作品に仕上がっていました。
製作は2003年で地方の工業都市四日市を舞台に、
壊れやすい年頃の少女の揺れ動く心が、
コンビナートの煙突や引込み線が交錯する街並みなど、
巧みに織り込まれた独特の背景により演出されています。
隣街の桑名のように歴史がある街でもなく、
反対隣の鈴鹿のように世界中から人々が集まる施設がある訳でもない、
コンビナートは有名だけど人々の日常生活とはあまり関係ないし、
まして自慢出来るものでもない。
そんな街に漠然とした不満を感じている少女が、
地元での映画のロケに出演する事になる。
スクリーンでの監督は今の瀬木監督のようですが、
少女に性を変えた昔の自分の姿に、
何とも優しい澄んだ眼差しを向けています。
飛び出してしまった故郷を、
自然に受け入れられるようになった今、
その風景が姿を変えてしまわないうちに、
はっきりした記憶にとどめるために、
彼女の自転車を借りて街を駆け回っているようです。
背景となっている工場も30年後にはどうなっているか分からないし、
喫茶店や住まいになっている狭い2階の和風造りの風情なども、
すでに姿を消しつつある存在となっています。
そして、喫茶店の窓辺の席に腰を下ろし、
焦点の定まらない目を外に向ける少女の表情も、
何とも言えない不安と不満のやり場を求めているようで、
監督が振り返る少年時代の憂いの投影として、
全編の主題ともなっているように感じました。
そんな瀬木監督、
最新作「卒業写真」にも注目が集まっているようですが、
こちらも観てみたいです。
映画 「いずれの森か青き海」
監督・脚本 : 瀬木直貴
プロデューサー : 黒田章博 中島雄一
撮影 : 清水良雄
音楽 : 中村善郎
美術 : 久保年且
録音 : 黒澤道男
照明 : 武山弘道
編集 : 井上秀明
キャスト
アオイ : 西村美紅
タカ(アオイのおじ) : 高野八誠
ヒロコ : 早坂好恵
ノブ : 那須直仁
渡辺哲 小宮孝泰 内山信二 研丘光男 境賢一
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