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新国立劇場 オペラ「アイーダ」 [オペラぁ!]

アイーダ.jpg


おそらく新国立劇場が持つレパートリーのうち、
最も価値の高いプロダクションではないでしょうか。

イタリアが誇るフランコ・ゼッフィレッリが演出・美術・衣装を手掛けた絢爛豪華な名舞台、
1998年の新国立劇場開場を記念して巨額を投じて制作されたこの「アイーダ」は、
オペラを知り尽くした老?演出家が、
綿密な時代考証をもとに構想を積み上げ、
劇場の機構を十分に生かして、プロセニアムを余すところなく使い切り、
息を呑むほど迫力のある巨大な装置が次々と展開する作品で、
昨今の新演出を鼻で笑う、まさにオペラの王道を行くものです。

ホワイエには制作模型が展示されていましたが、
奥に向かって何重にもレイヤーが重ねられた背景、
表と裏で模様の違う円柱をシーンによって使い分ける手法など、
演出家の舞台の精通ぶりと、
プロダクションに対する熱い想いと情熱が伝わって来るもので、
更に模型は前列の客席まで作られており、
ステージと客席の関係まで十分検討された経緯が伺われます。

300人の兵士、群集が繰り広げる凱旋シーンでは、
2頭の騎馬を先頭に、
音楽隊、エチオピアの略奪品?を掲げたエジプト軍の行進。
舞台美術と衣装、に加え登場人物の動きの一体感、
ピットではなく舞台から聴こえて来るかのようなオーケストラ、
王座では、王女の膝元で不安に駆られるアイーダ、
全てがドラマティックに平行展開していきます。

そして後光の射したような鈍い金色の照明に染まるグランドフィナーレは圧巻で、
その神々しさは、筆に尽くしがたく、
終演後に見た公演チラシが色あせて見えるほどでした。

ゼッフィレッリと言えば、
1963年に製作されたイタリア・ミラノのスカラ座の「ラ・ボエーム」も壮大で、
今でも2~3年に一度上演されています。
こちらも馬だか象だかが出て来たように思いましたが、
今年の7月に公演があるようです。
http://www.teatroallascala.org/

2006年には「アイーダ」も新製作されましたが、
写真で見る限り新国立劇場の方が良さそう、
主演歌手が途中で舞台を投げ出して話題になった舞台です。
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2006-12-13


アイーダ役のノルマ・ファンティーニは、
祖国への思いと恋の狭間で揺れ動く不安な心情を巧みに表現しており、
ラダメスを歌ったマルコ・ベルティは、
新国立劇場の分厚い合唱にも掻き消されない声量で、
劇場を圧倒していました。
彼は今年夏のイタリア・ベローナでの野外劇場でもアイーダで同役を演じる予定らしく、
巨大な遺跡の屋外劇場で歌うほどですから、、
なるほど、声が良く通るわけです。
http://www.arena.it/
そして一番良かったのはアイーダの恋敵で王女アムネリス役のマリアンナ・タラソワ。
憂いを含んだ味わい深い歌声で、
したたかな王女の品格と恋を嘆く弱い女性の複雑な感情を、
その端整な容姿で見事に演じていました。


そして、熱気にむせ返るほどの客席には、
元首相の小泉さんの顔も見えました。
節操の無い連れが、ご満悦の氏に握手を求めに行ったところ、
「素晴らしい舞台だ!」と絶賛していたそうです。

2003年の再演に次ぐ2回目の鑑賞でしたが、
ひとこと言うとすれば、
「ゼッフィレッリのアイーダを観て死ね!」
でしょうか?


2008年3月10日 新国立劇場 オペラ アイーダ(AIDA)

【作曲】ジュゼッペ・ヴェルディ(Giuseppe Verdi)  

スタッフ
【指 揮】リッカルド・フリッツァ(Riccardo Frizza)
【演出・美術・衣裳】フランコ・ゼッフィレッリ(Franco Zeffirelli)
【照 明】奥畑 康夫(Okuhata Yasuo)
【振 付】石井 清子(Ishii Kiyoko)  

キャスト
【アイーダ】ノルマ・ファンティーニ(Norma Fantini)
【ラダメス】マルコ・ベルティ(Marco Berti)
【アムネリス】マリアンナ・タラソワ(Marianna Tarasova)
【アモナズロ】堀内 康雄(Horiuchi Yasuo)
【ランフィス】アルチュン・コチニアン(Arutjun Kotchinian)
【エジプト国王】斉木 健詞(Saiki Kenji)
【伝令】布施 雅也(Fuse Masaya)
【巫女】渡辺 玲美(Watanabe Remi)  

【合 唱】新国立劇場合唱団(New National Theatre Chorus)
【バレエ】東京シティ・バレエ団(Tokyo City Ballet Company)
【演奏】東京フィルハーモニー交響楽団(Tokyo Symphony Orchestra)
タグ:ヴェルディ
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コメント 4

duke

とても勉強になりました。ヴェローナ、出るんですね、友人が行く予定です。
昨年のカルメン、タンホイザー、行きました。そして那覇のうりずん等も大好きです。また訪ねさせて頂きます!
by duke (2008-03-23 22:42) 

TaekoLovesParis

私も昨日、最終日に行きました。感激!ほんと、アイーダを見てから死ね、ですね。
4幕のタラソワ、情感と気迫がこもっていてよかったです。美しい人ですね。2幕の豪華絢爛さは聞きしに勝るものでした。トランペットの壮大な音色が耳に残っています。

by TaekoLovesParis (2008-03-30 16:24) 

euridice

つるりんこさん
こんにちは。コメントありがとうございます。
スペクタクルも素晴らしかったですが、お芝居としても
感動的で、ほんとに良い上演でした。こういう「アイーダ」を
鑑賞できたのは運が良かったと思います。

by euridice (2008-03-30 19:11) 

keyaki

私も、やっとゼッフィレッリの《アイーダ》を見ることができました。チケットをとる努力をしなかったので、初演、再演とふられました。
新国ファンとしては、
>「ゼッフィレッリのアイーダを観て死ね!」
です。満足でした。
by keyaki (2008-03-31 02:33) 

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