新国立劇場 オペラ 「椿姫」 [オペラぁ！]
早くも梅雨入りした関東地方、
雨が降ったり止んだりの一日の夕刻、
新国立劇場のホワイエは、何時になく賑わっていました。
２００２年、２００４年に次ぐおそらく３度目になる人気演目「椿姫」公演の初日、
若い女性が多く目に付きます。
どこを取っても名曲のヴェルディの傑作。
華やかな夜の社交界と、その裏に潜む悲劇を暗示する序曲の後、
幕が開くと、
舞台は薄暗いヴィオレッタの邸宅、
夜会に集う人達のストップモーションから始まります。
ルーカ・ロンコーニ演出の舞台は極めてオーソドックスながら、
徐々に明るくなる照明も完全には明るくならず、
衣装や装置も色彩を押さえ、
大掛かりな装置なのに派手な華やかさはなく、
シックな大人の世界が上手く演出されていると思いました。
ただ、
装置が舞台に仕込まれたレールの上を左右に動いていく場面展開は、
ちょっと間が抜けた感じで、
もう少しなんとか工夫が欲しいところです。
キャストでは主人公のヴィオレッタ。
子爵公爵を相手にする裏社交界の高級娼婦の役ですが、
ここはやはり知的であるだけでなく、妖艶な魅力が必要です。
まじめなオペラ歌手が演じると、
優等生っぽくなってしまうところですが、
エレーナ・モシュクは、
その容姿もさることながら、
心揺れる微妙な役柄を、
時には芯のあるビブラートの掛かった高音で、
時にはささやくような歌声に乗せて表現していました。
そして、
この役がなければストーリーが成り立たない要の役、
ヴィオレッタの恋人のお父さんジェルモン。
ラード・アタネッリは、
最初、声は渋くていいがちょっと若すぎないかな？と思いましたが、
若さゆえに間違いを起こし、最後はヴィオレッタに許しを乞う、
本当はいい人だったんだと思える役作りで納得しました。
これが歳の行った胡散臭いお父さんだと、
ヴィオレッタの最期、
悲嘆に暮れる息子のかたわらで、
口では自分の非を認め懺悔しつつも、腹の中では何を思っているか分からない、
「いやな嘘つきの自己中大人」となるのでしょうが・・・。
今回東京フィルハーモニー交響楽団を指揮したのは、
ヨーロッパでカペルマイスター（劇場専属指揮者）として活躍していた上岡敏之。
緩急を効果的に効かせた指揮で舞台を支え、喝采を浴びていました。
そういえば、
熱演だったコーラスのカーテンコールがありませんでしたが、
幕裏で何かあったのでしょうか？
今年は藤原歌劇団の「椿姫」公演もありますが、
こちらとの比較も楽しみです。
２００８年６月５日 新国立劇場 オペラ 椿姫(LA TRAVIATA)
【作 曲】Ｇ．ヴェルディ(Giuseppe Verdi)
スタッフ
【指 揮】上岡 敏之 (Kamioka Toshiyuki )
【演 出】ルーカ・ロンコーニ (Luca Ronconi)
【装 置】マルゲリータ・パッリ (Margherita Palli)
【衣 裳】カルロ・マリア・ディアッピ (Carlo Maria Diappi)
【照 明】セルジオ・ロッシ (Sergio Rossi)
【振 付】ティツィアーナ・コロンボ (Tiziana Colombo)
【舞台監督】斉藤 美穂
キャスト
【ヴィオレッタ】エレーナ・モシュク (Elena Mosuc)
【アルフレード】ロベルト・サッカ (Roberto Saccà)
【ジェルモン】ラード・アタネッリ (Lado Ataneli)
【フローラ】林 美智子 (Hayashi Michiko)
【ガストン子爵】樋口 達哉 (Higuchi Tatsuya)
【ドゥフォール男爵】小林 由樹 (Kobayashi Yoshiki)
【ドビニー侯爵】東原 貞彦 (Higashihara Sadahiko)
【医師グランヴィル】鹿野 由之 (Shikano Yoshiyuki)
【アンニーナ】岩森 美里 (Iwamori Misato)
【ジュゼッペ】小田 修一
【使者】大森 一英
【フローラの召使い】黒田 諭
【合唱指揮】三澤 洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団 (New National Theatre Chorus)
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団 (Tokyo Philharmonic Orchestra)
タグ：ヴェルディ
つるりんこさん、こんにちは
ナイスありがとうございます。この演出、プレミエ２度で、今回３度目で、はじめて涙腺がゆるみっぱなしになりました。
＞若い女性が多く目に付きます。
私の行った日もそうでした。華やいだ雰囲気がよかったです。
ドレスアップした西洋人女性も数人で目の喜びが増しました。
これでシーズンも無事終了ですね。来シーズンが楽しみです。
TBします。
by euridice (2008-06-15 20:09)
久しぶりの椿姫、とても楽しめました。
TBさせていただきますので、よろしくお願いします。
by keyaki (2008-06-17 20:54)