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新国立劇場 オペラ「ワルキューレ」 [オペラぁ!]

ko_20000817_chirashi.jpgワーグナー作曲の楽劇、「ニーベルングの指環」4部作の2作目。2回の休憩を含めて、5時間25分に渡る長丁場でした。

新国立劇場が誇りにしているらしい舞台の再演で、キース・ウォーナーの演出によるプロダクション。3月に上演された序夜「ラインの黄金」
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2009-03-20
につづく第1日「ワルキューレ」は、演出のほか、指揮者と主神ヴォータン役、そしてヴォータンの正妻フリッカ役が、

ストーリーの大筋は「ラインの黄金」とは全く違い、取り巻きの登場人物が前作と係わっています。主神ヴォータンと人間の間に出来た兄妹の近親相姦愛物語と、前回ちょっと登場した女神エルダとの間に出来たワルキューレたち、中でも愛娘のブリュンヒルデとの親子の愛と葛藤を巡る物語。

「ラインの黄金」同様、全編を支配するデヴィッド・フィールディングによる大胆かつデザインの優れた舞台と、キース・ウーォナーによる冴えた演出が目を引きました。

序奏、
嵐を表現する低弦の激しく不気味なリズムに、舞台への期待が高まります。
真っ暗な霧に煙る舞台は奈落が大きく開いており、
ストーリーの象徴とも言える霊剣ノートゥングが赤く光っています。
せり上がってくる舞台はフンディングの館、
床壁天井ともに極端なパースペクティブに見えるように傾斜が付けられ、
全てに木目の板模様が施され、巨大な椅子テーブルが置かれた様子は、
ゴッホの絵「アルルの寝室」のよう。
「ラインの黄金」と同じように、シンプルで美しいビジュアル的な舞台に、
矢印や数字などの記号が効果的に使われています。

そして今回、
倒れた戦士をヴァルハルへいざなうワルキューレは、
白衣を着て赤十字を付け、戦士をストレッチャーで運んでいます。
病院を連想させる真っ白な舞台でのワルキューレの「ホヨト~ホッ!」が、
ある意味新鮮。
全体が奥舞台へスライドしていくのも豪快で見ごたえ十分。

歌手では、ジークリンデ役のマルティーナ・セラフィンが素晴らしかった、
美しい声が体の中まで入ってくるよう。
ブリュンヒルデ役のユディット・ネーメットも体型は愛嬌ながら声はつややか。
引きかえ、「ラインの黄金」と比べてもオーケストラがどうもイマイチ、
普通舞台に集中するとオーケストラの存在が気にならなくなるものですが、
悪い意味で、
オーケストラが存在を示してしまっていたように思いました。
やはり、曲が難しいのでしょうか?


そしてこの序奏、
映画「記憶の棘(BIRTH)」で使われていました。
ニコール・キッドマン扮するニューヨークのアッパー・イーストサイドに住む未亡人が、
亡き夫の生まれ変わりと称する10歳の少年に翻弄され、
新たな婚約者と行くオペラに遅れてしまいます。
幕が上がった「ワルキューレ」で正装の観客を横切って席に着きますが、
不安と混乱で舞台が全く目に入りません。
舞台シーンはなく、ひたすら主人公のアップの映像でしたが、
嵐の序奏と主人公の不安が見事にリンクした効果的シーンでした。

ニコール・キッドマンと言えば、
前夫のトム・クルーズ主演の映画「ワルキューレ」も上演されていますが、
そっちの方はどうなのでしょうか?


2009年4月9日 新国立劇場 楽劇「ニーべルングの指環」第1日 「ワルキューレ」
"Der Ring des Nibelungen" Erster Tag Die Walküre

スタッフ
【作曲/台本】リヒャルト・ワーグナー
【指 揮】ダン・エッティンガー(Dan Ettinger)
【芸術監督】若杉 弘

《初演スタッフ》
  【演 出】キース・ウォーナー(Keith Warner)
  【装置・衣裳】デヴィッド・フィールディング(David Fielding)
  【照 明】ヴォルフガング・ゲッベル(Wolfgang Göbbel)
 
キャスト
【ジークムント】エンドリック・ヴォトリッヒ(Endrik Wottrich)
【フンディング】クルト・リドル(Kurt Rydl)
【ジークリンデ】マルティーナ・セラフィン(Martina Serafin)
【ヴォータン】ユッカ・ラジライネン(Jukka Rasilainen)
【ブリュンヒルデ】ユディット・ネーメット(Judit Németh)
【フリッカ】エレナ・ツィトコーワ(Elena Zhidkova)
【ゲルヒルデ】高橋知子(Takahashi Tomoko)
【オルトリンデ】増田のり子(Masuda Noriko)
【ワルトラウテ】大林智子(Obayashi Tomoko)
【シュヴェルトライテ】三輪陽子
【ヘルムヴィーゲ】平井香織(Hirai Kaori)
【ジークルーネ】増田弥生
【グリムゲルデ】清水華澄(Shimizu Kasumi)
【ロスヴァイセ】山下牧子(Yamashita Makiko)

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団(Tokyo Philharmonic Orchestra)

新国立劇場「ニーベルングの指環」公演レビュー
「ラインの黄金」
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2009-03-20
「ワルキューレ」
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2009-04-10
「ジークフリート」
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2010-02-12
「神々の黄昏」
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2010-03-20


タグ:ワーグナー
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コメント 1

TaekoLovesParis

つるりんこさんのきちんと的確な舞台描写を読みながら、この間の舞台を思い出していました。「ラインの黄金」もご覧になったのですね。
最初、舞台に赤く光る大きなノートゥングだけがつきささっているのが、象徴的で、これからの始まりを期待させて、よかったです。
私もブリュンヒルデ役の声がすばらしく、もっと聞いていたいと思いました。重そうな走り姿に難はあるけれど、見ているうちに可愛く思えてくるのが不思議。
第一幕は「アルルの寝室」、まさにそのとおりですね。
そして映画、記憶の棘、ビデオできっと出てるでしょう、見たいです。
by TaekoLovesParis (2009-04-12 10:01) 

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