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二期会 オペラ「カプリッチョ」 [オペラぁ!]

capriccio_thumb.jpg1幕の音楽による会話劇「カプリッチョ」は、
リヒャルト・シュトラウスが完成させた最後の舞台作品、
1942年にミュンヘン・バイエルン国立歌劇場で初演されています。

78歳の老シュトラウスがたどり着いた境地は、
「音楽と詩のどちらが優位か。」
など、たわいもない議論をするのが人生で、
幕切れの「月光の音楽」に象徴されるように、
最後に残るのものは、
「美しい音楽」という事でしょうか。

ジョエル・ローウェルスによる演出は、
舞台を1770年代のパリ郊外から、作品が発表された1942年に置き換えています。
更にヒロインに求愛する詩人と音楽家のどこから見ても日本人の2人が、
ユダヤ人という設定で、ナチスに強制連行されてしまいます。
そして最後は、
時が経ち辛くも楽しかったその日々をヒロインがしみじみと回想するシーンで幕。
ですが、
これ、解説がないと分かりません。
終演後に日生劇場の螺旋階段を下りながら会話するご夫人達も、
「あれ、ちょっとよく分かんなかったわよねぇ。」
などと連れ合いに同意を求めるように話したりしていました。
入場時には、
「演出家からのメッセージ」というちらしが配られました。
ローウェルスがこの演出で追求したかった事は分かりましたが、
これだけで舞台を理解するのは難しいでしょう。
分かってしまえば、
回想シーンも1942年の戦中困難な時代に想いをはせた感慨深い幕切れで、
「ばらの騎士」の元帥夫人さえ思わせるしんみりしたものでしたが、
「説明がないと分からない。」というのも如何なものでしょうか?

舞台セットはパリ郊外の邸宅で背面が一面アーチの欄間があるフレンチドアが並び、
そのテラス越しに川向こうの田園風景が見えます。
室内にはロココ調家具と舞踏室にあるような大きなシャンデリア、
左袖の壁にはヴァイオリンが飾ってあり、右袖は本棚でその裏に階段。
外の風景が暗くなったり夕陽に染まったりで舞台に変化を付けていますが、
これと言って特筆する所のない装置です。
序曲では邸宅を廃墟から当時の状況に設営するシーンが盛り込まれていますが、
これが回想の時間巻き戻しを意味している事は後にならないと分かりません。

会話劇というだけあって、字幕を追うのもやっとなのに、
あちこちで人が動くのでストーリーについていくのも大変ですが、
最後はご褒美?
佐々木典子の力の入った独唱も、だんだんピアニッシモに変わり、
シュトラウスの弦楽による美しいフィナーレは、
「もう、このまま終わってくれなくていい。」と思えるものでした。


2009年11月20日 二期会 オペラ「カプリッチョ」
『CAPRICCIO』
Libretto by Clemens Heinrich Krauss & Richard Strauss
Music by RICHARD STRAUSS Op.85
Presented by Tokyo Nikikai Opera Foundation with Nissay Theatre

台本:クレメンス・クラウス及リヒャルト・シュトラウス
作曲:リヒャルト・シュトラウス
会場: 日生劇場

<スタッフ>
指揮:沼尻竜典  
演出・装置:ジョエル・ローウェルス       
衣裳:小栗菜代子  
照明:沢田祐二        
舞台監督:小栗哲家  
公演監督:曽我榮子  
 
<キャスト>
伯爵令嬢マドレーヌ : 佐々木典子
伯爵, マドレーヌの兄 : 初鹿野 剛
作曲家フラマン : 望月哲也
詩人オリヴィエ : 石崎秀和
劇場支配人ラ・ロシュ : 米谷毅彦
女優クレロン : 加納悦子
トープ氏 : 大川信之
イタリア人ソプラノ歌手 : 羽山弘子
イタリア人テノール歌手 : 渡邉公威
執事長 : 佐野正一
従僕 : 菅野 敦・西岡慎介・宮本英一郎・園山正孝・井上雅人・倉本晋児・塩入功司・千葉裕一

管弦楽: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団


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