SSブログ

新国立劇場 オペラ「アンドレア・シェニエ」 [オペラぁ!]

ko_20002514_chirashi.jpg新国立劇場のアンドレア・シェニエは、
今年10月の「アラベッラ」と同じフィリップ・アルローの演出。
ななめに倒れた壁で区切った舞台が回転する事で、
シーンが進行していく演出です。
緞帳の代わりに白い壁が左右にスライド、
幕の切れ目では下辺がななめなカットされた壁が上から下りてきて、
物語のテーマ、フランス革命の象徴ギロチンを連想させます。
回転する壁と左右、上下に動く壁を巧みに操り、
明暗の照明を駆使して舞台を盛り上げます。

実は5年前のプレミエでも観たのですが記憶が乏しく、
カーンと明るい白い舞台にフランス国旗と、
通常の演出では、最後の絶叫のあと処刑台へ向かう馬車に乗るところを、
全員が床に倒れ、子供が旗を振って走り去る幕切れぐらいしか覚えていません。
1幕と2幕の間には5年の月日が流れますが、
意外に5年は長いものだと改めて感じました。

今回の配役は、
アンドレア・シェニエをミハイル・アガフォノフ、マッダレーナはノルマ・ファンティーニ。
2人とも負けず劣らずの声量で大迫力、特に2重唱は鳥肌物です。
主役の2人の影に隠れぎみですが、
伯爵の従僕から革命の主導者へ変貌を遂げるジェラールを歌ったのはアルベルト・ガザーレ。
とにかく声がいいしカッコもいい。
バリトン特有の悪役かと思えば情もなさけもあって実はいい奴、
女に振られ、裁判も采配できずちょっと気の毒で感情移入してしまいます。

そして脇役が多いのもこのオペラの特徴。
マデロン、マテュー、修道院長、フーキエ、デュマ、家令のキャストは、
5年前と同じ歌手が歌っています。
そこで思い出したのは、おばあさん市民マデロン役の竹本節子。
革命軍へ供出する貴金属もなく、
自分の小さな孫を「もう立派な大人だから使ってください。」と差し出す、
そのけな気な役作りと情感たっぷりの歌声に大いに拍手を送ったものでした。
2005年の配役はこちら↓
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2005-11-29

もうひとつ、舞台とは関係ありませんがアンドレア・シェニエと言えば、
トム・ハンクス主演の映画「フィラデルフィア」を思い出します。
エイズを患ったゲイの主人公が、
一流法律事務所を解雇され、
不当な差別に怒り訴訟を起こす物語。
失意の主人公は弁護士の前で、
マリア・カラスが歌うマッダレーナのアリア「母は死んで」のレコードを掛け、
涙しながらうわ言のようにこのオペラへの感情を語ります。
理不尽な世の中に翻弄されても愛を信じる姿に自分を重ね合わせて感極まるところは、
印象深いシーンでした。


2010年11月18日 新国立劇場 オペラ「アンドレア・シェニエ」
Umberto Giordano:Andrea Chénier

ウンベルト・ジョルダーノ/全4幕

スタッフ
【指 揮】フレデリック・シャスラン(Frédéric Chaslin)
【演出・美術・照明】フィリップ・アルロー(Philippe Arlaud)
【衣 裳】アンドレア・ウーマン(Andrea Uhmann)

キャスト
【アンドレア・シェニエ】ミハイル・アガフォノフ(Mikhail Agafonov)
【マッダレーナ】ノルマ・ファンティーニ(Norma Fantini)
【ジェラール】アルベルト・ガザーレ(Alberto Gazale)
【ルーシェ】成田博之(Narita Hiroyuki)
【密偵】高橋 淳(Takahashi Jun)
【コワニー伯爵夫人】森山京子(Moriyama Kyoko)
【ベルシ】山下牧子(Yamashita Makiko)
【マデロン】竹本節子(Takemoto Setsuko)
【マテュー】大久保眞(Okubo Makoto)
【フレヴィル】萩原潤(Hagiwara Jun)
【修道院長】加茂下稔(Kamoshita Minoru)
【フーキエ・タンヴィル】小林由樹(Kobayashi Yoshiki)
【家令/シュミット】大澤 建(Osawa Ken)

【合 唱】新国立劇場合唱団(New National Theatre Chorus)
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団(Tokyo Philharmonic Orchestra)

nice!(5)  コメント(0)  トラックバック(2) 
共通テーマ:音楽

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2