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新国立劇場 オペラ「ジークフリート」 [オペラぁ!]

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新国立劇場のワーグナーのニーベルンの指環はゲッツ・フリードリヒの演出。
今回は4部作の第3作「ジークフリート」、
前回第2作の「ワルキューレ」は昨年の幕開けのプロダクションでした。
公演レビューはこちら↓
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2016-10-06

第1幕はミーメの鍛冶小屋。
背景の森は黒い円柱の林立で抽象的に表現されています。
テントも張ってあって鍛冶小屋はキャンプ場の炊事場のような感じですが、
分かりやすい舞台装置です。
第1幕の登場人物はミーメ、ジークフリート、ヴォータン。
ジークフリート役はワルキューレでジークムントを歌ったステファン・グールド、
前回は父親で今回は息子役という事ですが、
5時間を超える終幕までほぼ出ずっぱりなので強靭な喉と相当な体力が必要です。
ヴォータン役も前回と同じくグリア・グリムスレイ、
90分余りの第一幕ですがわずか3人で歌っているとは思えない存在感です。

第2幕、
「恐れを知らない」ジークフリートは恐れを知るためにと森へ分け入ります。
ファフナーが操る怪物を聖剣で倒し指環と隠れ頭巾を手に入れますが、
バルーンで作った怪物の巨大な足はちょっと興ざめ。
小人族のミーメやアルベリヒの策略にも怯まず打倒、
「恐れ」を知る事は出来ませんでした。

第3幕、
無背景の舞台中央に佇むヴォータン。
力を借りるために地下の智の女神エルダを呼ぶと、
舞台全面がせり上がり、怪しげな奈落からエルダ登場。
ダイナミックな演出ですが、
主神だったヴォータンの思い通りにはならないよう。

その後は炎に囲まれたブリュンヒルデが眠る岩山。
ワルキューレの終幕からつながりますが、
舞台もワルキューレの時の滑走路のような装置が再使用され、
本物の炎のようなものが前面で揺れています。
ブリュンヒルデ役は前回のイレーネ・テオリンからリカルダ・メルベートへ。
包み込むようなしっとりとした歌唱です。

150年も前の音楽劇に5時間以上も浸っていると、
頭の中が空っぽになっていくような感じがして来ます。
しばらくその状態が続き家へ帰って、
新聞を読んでも政治の事や事件や事故なども何だか些末な事に思えて来るのです。

今回も皇太子の列席がありました。
次は「神々の黄昏」という事でしょうか。


2017年6月1日 新国立劇場 オペラ「ジークフリート」
 
スタッフ
指揮 : 飯守泰次郎(IIMORI Taijiro)
演出 : ゲッツ・フリードリヒ(Götz FRIEDRICH)
美術・衣裳 : ゴットフリート・ピルツ(Gottfried PILZ)
照明 : キンモ・ルスケラ(Kimmo RUSKELA)
演出監修 : アンナ・ケロ(Anna KELO)
演出補 : キム・アンベルラ(Kim AMBERLA)
舞台監督 : 村田健輔(MURATA Kensuke)
 
キャスト
ジークフリート : ステファン・グールド(Stephen GOULD)
ミーメ : アンドレアス・ コンラッド(Andreas CONRAD)
さすらい人 : グリア・グリムスレイ(Greer GRIMSLEY)
アルベリヒ : トーマス・ガゼリ(Thomas GAZHELI)
ファフナー : クリスティアン・ ヒュープナー(Christian HÜBNER)
エルダ : クリスタ・マイヤー(Christa MAYER)
ブリュンヒルデ : リカルダ・ メルベート(Ricarda MERBETH)
森の小鳥 : 鵜木絵里 九嶋香奈枝 安井陽子 吉原圭子
 
森の小鳥(ダンサー): 五月女遥 
 
管弦楽 : 東京交響楽団
協力 : 日本ワーグナー協会
芸術監督 : 飯守泰次郎

タグ:ワーグナー
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コメント 1

dezire 

こんにちは、
私もワーグナーの『ジークフリート』の舞台を鑑賞してきましたので、鑑賞レポートを読ませていただき、『ジークフリート』の舞台を再体験することができました。ワーグナーの楽劇は、活気に満ち血が通った力強い音楽、説得力を持って語りかけてくる音楽のテンポの躍動的変化が生み出す推進力、常に人間の歌声が中心に置かれながら、完璧なまでのオーケストレーションは、ワーグナーの世界に魅了されました。ジークフリート役のステファン・グールドは、高い音も力強く伸び、高い音が鮮やかに表現した歌声は感動的でした。ブリュンヒルデ役カルダ・メルベートは、神性を失ってしまったことへの不安、ジークフリートの求愛に値しないのではないか悩みなどを激しい調子で歌い感動的に表現していました。コ国民だけでなく人類に普遍のものであることを、目の前で作品をじっくり見ていると感じました。ブリュンヒルデの熱唱に負けることなく、ステファン・グールドの歌声も緊張感や声の透明感は途切れることがなく、最後の二人の熱唱の競演はこの大作のクライマックスに相応しい迫力と感動がありました。 私はキース・ウォーナー演出、準・メルクル指揮「トーキョー・リング」も鑑賞していましたので、今回の飯守泰次郎さんの『ジークフリート』も冷静に客観的に比較しながら楽しむことができました。

その観点も含めて、『ジークフリート』の魅力と特徴、楽劇の舞台に及ぼす演出の力を考察しながら、今回の飯守泰次郎さんの魅力を整理してみました。一度眼を通していただき、何かのご参考になれば幸いです。ご感想、ご意見などコメントいただけると感謝いたします。



by dezire  (2017-06-13 23:44) 

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