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新国立劇場 バレエ「コッペリア」 [バレエぇ!]


ko_20000836_chirashi.jpgバレエ「コッペリア」は1870年5月に、
パリのオペラ座で初演されています。
その7月には普仏戦争が勃発、
しかもプロセイン王国に負けてしまっていますから、
何ともタイミングの悪い時期の発表と言えそうです。

作曲はレオ・ドリーブ、
パリ音楽院で1941年に「ジゼル」を発表した、
アドルフ・アダンに学んでいるからか、
古典的な流れを汲むバレエ音楽のように感じます。


新国立劇場の紹介文によると、
「あのチャイコフスキーに、『彼の作品を知っていたら白鳥の湖は書かなかった』
と言わしめたレオ・ドリーブの心躍る音色」との事ですが、
なるほどアダンやチャイコフスキーと比べると力強いオーケストレーションですが、
しかしちょっと騒々しい音楽というか、優美さに欠ける感じがしないでもありません。
以前パリに行った時も同じ時期に、
ジゼルはガルニエ・オペラ座、コッペリアはバスチーユ・オペラ座での公演があり、
劇場と同じようにジゼルの方が格上だと感じました。

このプロダクションは、
1976年のローラン・プティの振付による新?演出で、
舞台をハンガリーからフランスに移し、
エツィオ・フリジェーリオによる美術は、
広場を囲むブルーグレーのレンガ壁に窓がいくつも開いたシンプルな背景で、
衣装や振付等が都会的、かつ現代的に仕上げれており、
笑いを誘うエンターテイメントの要素も加えられ、
曲も多少アレンジされているようです。

優美な群舞はないものの、
切れのある群衆の動きはなかなかの見物。
足を踏み鳴らす男性陣とかすかな衣擦れが色気を漂わせる女性陣、
この性の描き分けもプティのエスプリ?

そして、
何と言っても注目はスワニルダを踊った英国ロイヤル・バレエのタマラ・ロホ。
小柄ながら、しなやかな腕の動きに、
上げると天井?を突き破りそうな長い足、
ダイナミックなポーズで彫刻のようにピタリと止まる肢体と、
さりげなく襟に手をやる仕草や情感たっぷりで憂いのある表情。
全く、どんな小さな動きにも目が離せません。
人形に成りすまして椅子に座っている時は、
まばたきひとつしていませんでしたし、
人形のふりをして動き出した時も、
プティの振付も相まって独特のタマラ・ロホの世界を作っていました。

そして最後は、
スワニルダとフランツの若き2人が結ばれ大円団。
プティは、本来変わり者の冴えない人形作家コッペリウスに、
燕尾服を着せ道化を演じさせて聴衆に親しみを感じさせた上で、
明るい音楽や群集と対照的に、
スワニルダを失い人形も侮辱された絶望感を引き立たせていますが、
そこに、
常に舞台裏の振付家ローラン・プティ本人を重ねているようにも感じました。


2009年6月29日 新国立劇場 バレエ「コッペリア」
Roland Petit’s COPPELIA

【音 楽】レオ・ドリーブ(Léo Delibes)
【振 付】ローラン・プティ(Roland Petit)
【指 揮】デヴィッド・ガルフォース(Daivid Garforth)
【美術・衣装】エツィオ・フリジェーリオ(Ezio Figerio)

キャスト
【スワニルダ】タマラ・ロホ(Tamara Rojo)
【フランツ】ホセ・カレーニョ(José Manuel Carreño)
【コッペリウス】ルイジ・ボニーノ(Luigi Bonino)
【スワニルダの友人】西山裕子/さいとう美帆/寺島まゆみ/伊東真央/寺田亜沙子/細田千晶

【演奏】東京フィルハーモニー交響楽団


タグ:バレエ
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