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新国立劇場 オペラ「サロメ」 [オペラぁ!]



この「サロメ」は、
イギリスの小説家オスカー・ワイルドが、
新約聖書の一説を題材にとり1981年にフランス語で戯曲化したものに、
リヒャルト・シュトラウスがオペラ化するためにドイツ語でストーリーを縮小して、
曲を付けたもので、
1905年に初演されています。

オスカー・ワイルドはホモ・セクシャルがらみの事件で投獄されるなど、
19世紀末の退廃した社会を文字通り生きながら、
官能と背徳を併せ持ったこの前衛作品を完成させました。
この戯曲「サロメ」には、
アール・ヌーボーの大作家のオーブリー・ビアズリーが、
モノクロームの版画挿絵を描いて話題となりましたが、
イギリスでは検閲に掛かって上演中止となったそうです。

そんないわく付きの作品ですが
リヒャルトシュトラウスは戯曲を観て、
「この劇は音楽を求めている!」と直感したそうです、
彼の官能を刺激したのでしょうか。

そして今回の公演、
アウグスト・エファーディング演出のオペラは、
その耽美的芸術を十分に堪能出来るものでした。

まずオープニング。
客席の非常灯が消える事はあっても、
オーケストラピット等には明かりがあり、
劇場が真っ暗になる事は通常ないと思うのですが、
落ちていく照明がどこまでも落ちていき、
遂には真っ暗になります。

この闇の演出は、
観る者の不安と好奇心をあおり、
結果、氏は、
何を見せる事もなく、
見事に聴衆を舞台に引き込んでしまいました。

ゆっくり幕が上がると、
テントで出来たモスク風宮殿が現れ、
妖しげなオレンジ色の光が布壁から透けて、
中で動く人が影になって浮き上がります。
手前には直径5メートルぐらいありそうな古井戸に、
鉄網の蓋がかかっています。
預言者ヨハナーンが幽閉されているのですが、
井戸と言ってもこのぐらいの大きさがあれば十分生活出来そう。

テントの幕が開いて音楽が始まります。
以降、舞台の展開と言えば、
井戸の蓋と、テント幕の開閉だけ。
これも観る者の集中力を高める演出のようです。

音楽はクラリネットのソロに続いてすぐにナボラート役のテノール、水口聡の出番。
NHKの「ニューイヤーオペラ」にも出ていた実力派ですが、
王の義娘サロメへの叶わぬ想いを募らせ自害する衛兵隊長役で、
後半はずっと舞台上で死んだふりをしていなければならない我慢役が気の毒でした。

ヨハナーン役のジョン・ヴェーグナーは、
井戸の中から響く歌声が聖者とも悪霊とも取れる、
ミステリアスな感じでしたが、
井戸を出て来てからもなかなか妖しげな人物を好演していました。

ヘロデ役のヴォルフガング・シュミットは、
前回も同役で出ていたというはまり役らしく、
良く通る特徴のあるエキセントリックな声で、
わがままで気の弱い王を圧倒的存在感で演じており、
間合いの取り方が難しい役ですが、
歌舞伎の市川団十郎さながらの切れのある絶妙な立ち回りを見せてくれました。

2000年以降4回目の公演で、
シュトラウスのオペラの中でも難解な部類だと思うのですが、
意外にホールはほぼ満席。
客層も、
サロメの官能的「7つのベールの踊り」にかぶりつくオジさんが多いのかと思ったら、
意外に女性が多くてビックリ。
意外にも、
「サロメ」はシュトラウスのオペラでも、
一番上演回数が多い演目だそうです。



2008年2月6日 新国立劇場 オペラ「サロメ」  


スタッフ
【指 揮】トーマス・レスナー(Thomas Rösner)
【演 出】アウグスト・エファーディング(August Everding)
【美術・衣裳】ヨルク・ツィンマーマン(Joerg Zimmermann)

キャスト
【サロメ】ナターリア・ウシャコワ(Natalia Ushakova)
【ヘロデ】ヴォルフガング・シュミット(Wolfgang Schmidt )
【ヘロディアス】小山 由美 (Koyama Yumi)
【ヨハナーン】ジョン・ヴェーグナー(John Wegner)
【ナラボート】水口 聡(Mizuguchi Satoshi)
【ヘロディアスの小姓】山下 牧子 (Yamashita Makiko)
【5人のユダヤ人 1】中嶋 克彦(Nakajima Katsuhiko)
【5人のユダヤ人 2】布施 雅也(Fuse Masaya )
【5人のユダヤ人 3】松浦 健(Matsuura Ken)
【5人のユダヤ人 4】小貫 岩夫(Onuki Iwao)
【5人のユダヤ人 5】大澤 建 (Osawa Ken)
【2人のナザレ人 1】青戸 知(Aoto Satoru)
【2人のナザレ人 2】青柳 素晴(Aoyagi Motoharu )
【2人の兵士 1】大塚 博章(Otsuka Hiroaki )
【2人の兵士 2】斉木 健詞(Saiki Kenji )
【カッパドキア人】藤山 仁志(Fujiyama Hitoshi)
【奴隷】鈴木 愛美(Suzuki Manami)

【管弦楽】東京交響楽団(Tokyo Symphony Orchestra)


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コメント 2

TaekoLovesParis

つるりんこさん、とっても上手に舞台のようすを再現してくださっていますね。最初の静寂に続いて、水口さんの響き渡る第一声、はじまりかたが良かったです。中央の井戸がギイと綱で開く演出はなかなかうまいですね。注目のサロメの踊りもヴェールを上手に扱って、見せる踊りで、私には満足度の高いほうのオペラでした。
私の記事にリンクをはらせていただきましたが、ご都合が悪かったらおっしゃってください。
by TaekoLovesParis (2008-02-08 19:57) 

ada

はじめまして。ご訪問ありがとうございました。同じ日にサロメ観たのですね。
by ada (2008-02-10 20:44) 

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