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北とぴあ オペラ「思いがけないめぐり会い、または メッカの巡礼」 [オペラぁ!]

メッカ.jpgグルックは、
18世紀にオーストリアとフランスで活躍した作曲家。
時代的には、
初期にハイドン、後期にモーツァルトと同世代、
「思いがけないめぐり会い、または メッカの巡礼」は、
グルック50歳の時のオペラ・コミック、
1764年にウィーンブルク劇場で初演されています。
オペラ・コミックとは、
セリフ付きのオペラでドイツでは、
ジングシュピールと呼ばれていますが、
フランス趣味が流行した当時、
フランス語で書かれたコミカルなオペラで、
後の19世紀にはオペレッタ、
さらにはアメリカへ渡ってミュージカルへと、
発展していくものです。

エジプトのカイロを舞台にしたこの物語は、
駆け落ち途中で離ればなれになってしまったバルソラ王子とペルシャ王女、
王女はエジプト君主に捕らえられつつも案外自由の身。
偶然やって来た王子の愛を確かめるために侍女3人に王子を誘惑させる。
王子は誘惑に打ち勝ち2人が再会を喜んだところ、今度は君主に見つかってしまい、
メッカの巡礼に紛れて逃亡。
しかし懸賞目当てに密告され捕まってしまい死刑を宣告されるが、
愛と恩赦の訴えで、君主は最後2人を許すどころか結婚式まで挙げさせ、
エジプト国へ迎えるような事まで言って幕。

という、ストレートな物語は「魔笛」も真っ青!・・・?
3幕通して変わらない舞台装置は、
左右のパースペクティブに配置した壁に2箇所づつアーチ状に切り抜いた出入口を設け、
壁に囲まれた舞台に小道具を置いて場景演出、
建物に囲まれた市場だったり、ハーレムの館だったりします。
ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場の演出課に所属しているという、
飯塚励生の演出・装置でしたが、
大きな展開のないちんまりした舞台でした。

それに引き換え、生き生きしていたのは6人のダンサー。
本来ならバレエで演じられるところかもしれませんが、
キレのある動きで助演的要素まで果たし舞台を盛り上げていました。
また、大畑浩恵の振付も従来のダンスパターンの組み合わせでなく、
アイデアの溢れた新鮮なものでなかなか目が離せません。
スティーヴ・アルメリーギの衣装も、
ゆったりした布の質感と鮮やかな色彩で、
遠いアラブの民族情緒を華やかに演出していました。

王女レジア役はソプラノの森麻季。
第2幕からの登場ながら、
このキャスティングがなければ相当陳腐な舞台になっていた事でしょう。
王女と言うよりは女王様の貫禄と声量で、
王子がかわいい坊やに見えてしまうぐらいです。
そう見えてしまう王子との2重唱でも、
グルックのシンプルで美しい曲では十分に聴き応えがあります。

演奏は去年の「騎士オルランド」と同じ古楽管弦楽団のレ・ボレアード。
今回は日本にない当時のオーボエの一種、
コールアングレという楽器を今回のために作ってしまったとの事。
「そんな事出来るの?」と、びっくりですが、
オリジナルの音を求める心意気に感心します。
ゆるい古楽器の演奏は体を休めたい週末の宵にぴったりです。


北とぴあ オペラ「思いがけないめぐり会い、または メッカの巡礼」
Christoph Willibald Gluck《La Rencontre imprévue ou Les Pèlerins de la Mecque》
1764年初演
2009年11月13日北とぴあ・さくらホール

【作曲】 クリストフ・ヴィリバルト・グルック
【台本】 L.H.ダンクール
【指揮】 寺神戸 亮
【演出】 飯塚 励生
【衣装】 スティーヴ・アルメリーギ
【照明】 室伏生大
【振付】 大畑浩恵
【演出助手】 中村康裕
【コレペティートル】 上尾直毅
【舞台監督】 深町達
 
【出演】
レジア : 森麻季
バルキス : 野々下由香里
ダルダネ : 柴山晴美
アミーヌ : 山村奈緒子
アリ : 鈴木准
オスミン : 羽山晃生
托鉢僧 : フルヴィオ・ベッティーニ
ヴェルティゴ : 大山大輔
スルタン : 根岸一郎
隊長 : 谷口洋介

【演奏】レ・ボレアード
コンサートマスター : 若松夏美
第1ヴァイオリン : 竹嶋祐子、荒木優子、秋葉美佳、三原朋絵
第2ヴァイオリン : ディミトリー・バディアロフ、大内山薫、大西律子、長岡聡季、廣海史帆
ヴィオラ : 森田芳子、成田寛、渡部安見子
チェロ : 山本徹、西沢央子、小林奈那子
ヴィオローネ : 今野京、小室昌広
フルート/ピッコロ : 前田りり子
オーボエ/コール・アングレ : 三宮正満、森綾香
ファゴット : 功刀貴子、永谷陽子、鈴木禎
ホルン : 下田太郎、松浦光男
打楽器 : 近藤郁夫
チェンバロ : 上尾直毅

【ダンサー】 三井聡、井上圭、関根実里、水那れお、今村たまえ、黒瀬麻美


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