SSブログ

新国立劇場 オペラ「神々の黄昏」 [オペラぁ!]

ko_20001670_chirashi.jpgワーグナーのオペラ「神々の黄昏」は、
楽劇「ニーベルングの指環」4部作のうち、
3作目の「ジークフリート」
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2010-02-12
に続く最終章。、
指環を巡る争いの末にやってくる神々の終焉、
火と水に包まれ全てが崩壊して終わる完結編は、
休憩を入れて6時間半の超大作。
その音楽や舞台の随所に、
前編までの風景が散りばめられており、
ある哀愁をこめてストーリーを思い起こしつつ、
最後は舞台と客席が共有した長時間に伴う、
何とも言えない一体感と達成感に至る舞台でした。

キース・ウォーナーのスタイリッシュな演出に期待が高まる幕開け、
奈落からせり上がるダイナミックな装置の予想に反して、
左右からスライドして現れる抑え目の舞台は、
神聖化されたトネリコの樹が矢印に抽象化されて横たわっています、
4作通して現われていた矢印は神の力の象徴だったのでしょうか。

そこで過去、現在、未来を司る女神ノルンたちが、
吊り下げられた巨大リールからフィルムを引っ張り出して過去を回想、
また、新しいリールを持ってきてフィルムを覗き神々の未来を憂います。
この物語が第1作「ラインの黄金」より、
主神ヴォータンが撮った映像記録という設定で進められている事とリンクしています。

舞台は転回して、
ゆがんだ小屋にバラの壁紙を張ったブリュンヒルデの家。
ジークフリートと朝を迎えたブリュンヒルデは、
前作でジークフリートが着ていたのと同じスーパーマン印のスウェットシャツ姿、
ダブダブなのは彼から借りたから。
今ではそこまで親密になっているという事なのでしょう。

それからジークフリートは、
ブリュンヒルデがワルキューレ時代に神の使いとして、
共に働いた愛馬グラーネに乗ってラインへと旅に出ますが、
キッチュ演出ではオモチャの木馬のため、
やむなくトランクに詰めて徒歩で出掛けます。

旅先のギービヒの館で振舞われた飲み物で、
過去を忘れてしまったジークフリートは、
館主グンターの妹グートルーネに一目惚れ、
異父兄弟のハーゲンにそそのかされて、
ブリュンヒルデと指環を奪って帰還します。

ギービヒの館では家臣達が集合。
コーラスの男性は白衣に緑のエプロンで、
食品加工工場の作業員のような服装。
女性陣は助演か?
ピンクのスーツはモーターショーのコンパニオンのよう、
髪型からすれば「1970年万博の」と言った方がいいかも知れません。
いずれもその意図は不明。
ただし、4部作通して唯一の合唱、
人数の加勢もあって俄然見応えが出てきます。

そしてジークフリートの死から、
舞台は神々の終焉に向けて緊張感高まりますが、
どうして不死身のはずなのに殺されたかというと、
決して敵に背を見せないジークフリートの背中を、
ブリュンヒルデが愛撫しなかったためらしいです。

幕切れでは、
ラインの河底から盗まれた黄金を象徴するジグソーパズルの一片が、
ピタリとはまって一件落着。
水泡に埋まるスクリーンが奈落に落ちて物語が終わります。
その後、暗闇の映写室にスタッフが集まって、
長大な上映が終わった事を示します。

観客は「指環の物語」と「上演の物語」の2つの物語を観たという事、
キース・ウォーナーが無理なく持ち込んだ新しい解釈に脱帽です。

総譜の最後に書き込まれた言葉を私も言おう、
「もう、何も言うまい。」


2010年3月18日 新国立劇場 オペラ「神々の黄昏」
Richard Wagner:"Der Ring des Nibelungen" Dritter Tag Götterdämmerung

スタッフ
【指 揮】ダン・エッティンガー(Dan Ettinger)
【演 出】キース・ウォーナー(Keith Warner)
【装置・衣裳】デヴィッド・フィールディング(David Fielding)
【照 明】ヴォルフガング・ゲッベル(Wolfgang Göbbel)
【企 画】若杉 弘
【芸術監督代行】尾高忠明
【主 催】新国立劇場

キャスト
【ジークフリート】クリスティアン・フランツ(Christian Franz)
【ブリュンヒルデ】イレーネ・テオリン(Iréne Theorin)
【アルベリヒ】島村武男(Shimamura Takeo)
【グンター】アレクサンダー・マルコ=ブルメスター(Alexander Marco-Buhrmester)
【ハーゲン】ダニエル・スメギ(Daniel Sumegi)
【グートルーネ】横山恵子(Yokoyama Keiko)
【ヴァルトラウテ】カティア・リッティング(Katia Lytting)
【ヴォークリンデ】平井香織(Hirai Kaori)
【ヴェルグンデ】池田香織(Ikeda Kaori)
【フロスヒルデ】大林智子(Obayashi Tomoko)
【第一のノルン】竹本節子(Takemoto Setsuko)
【第二のノルン】清水華澄(Shimizu Kasumi)
【第三のノルン】緑川まり(Midorikawa Mari)

【合 唱】新国立劇場合唱団(New National Theatre Chorus)
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団(Tokyo Philharmonic Orchestra)

新国立劇場「ニーベルングの指環」公演レビュー
「ラインの黄金」
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2009-03-20
「ワルキューレ」
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2009-04-10
「ジークフリート」
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2010-02-12
「神々の黄昏」
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2010-03-20

タグ:ワーグナー
nice!(5)  コメント(0)  トラックバック(6) 
共通テーマ:音楽

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 6