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新国立劇場 演劇 「やけたトタン屋根の上の猫」 [お芝居っ!]

ko_20002501_chirashi.jpgCat on a Hot Tin Roof 「熱いトタン屋根の猫」
とも訳されるテネシーウィリアムズのこの戯曲は、
1955年にニューヨークで初演され、
同年ピューリッツァー賞を受賞しています。
アメリカを描いた作品として価値が高いという事でしょうか。

南部の大農場を舞台に、
癌に侵された家長を取り巻く家族の確執が、
嘘と真実、生への執着と逃避を、
織り交ぜながら展開していきます。

「やけたトタン屋根の上の猫」とは、
熱くて立っていられない程居心地が悪い場所に、
居なければならない理不尽さを表現したもののようですが、
「ガラスの動物園」とか「欲望という名の電車」とか、
テネシー・ウィリアムズのタイトル・ネーミングは常に観望意欲をそそります。

全編を通して舞台となるのは次男夫婦の寝室。
ロココ調だかビクトリア調だかよく分からない家具をしつらえた、
いかにもアメリカの成金趣味のインテリアは、
中央にキングサイズのベッド、上手にはドレッサー、その脇にはバスルームへのドア。
下手には廊下へ通じるドア、廊下の手前には1階へ通じる階段。
寝室の奥はバルコニーで、時々家長の誕生日を祝う花火が上がり夏の夕べを演出。
大邸宅の間取りが過不足なく自然な形で上手く表現されています。

寝室の主である次男は父親の寵愛を受けながらも27歳で夫婦に子供がなく、
アル中でゲイの疑いもあり、昨日は怪我で片足ギブス状態です。
幕開け、
照明が落ちると流れてくるサックスのジャズが場所と時代を示唆します。
明るくなると次男ブリックは猫脚のバスタブでシャワーを浴び、
終わるとお尻を客席に向けてシルクのパンツをはきます。
妻のマギーは寝室に入って来るなり義理兄の子供たちをののしりながらドレスを脱ぎ、
スリップ姿で夫に話し掛けます。
かなりきわどい演出は、
観ていて、完全なプライベートを覗いている感じで罪悪感さえ覚えるほどです。

そんな緊張感溢れる舞台で妻のマギー役を演じた寺島しのぶは、
着替えや化粧、ストッキングのガーターをはめながらと、
自然な動作を続けながら、
1時間に及ぶ第1幕を罵声嬌声を挟みながらしゃべり続け、
汗だくになって演じ切り、
幕が終わって客席が明るくなってやっとこちらも力が抜けた感じでした。

そしてこの演出が女性というのも驚きです。
服を脱がせる過程を見せたり、松葉杖を振り回したり、
子供を突き倒したり、唾を吐き飛ばして怒鳴り散らす言い争いも壮絶でしたが、
現実でない舞台という意味では、女性ならでは!の演出なのかも知れません。


2010年11月26日 新国立劇場 演劇 「やけたトタン屋根の上の猫」
Tennessee Williams : Cat on a Hot Tin Roof

スタッフ
【 作  】テネシー・ウィリアムズ
【翻訳】常田景子
【演出】松本祐子
【美術】松井るみ
【照明】沢田祐二
【音響】高橋巌
【衣装】前田文子
【ヘアメイク】川端富生
【演出助手】城田美樹
【舞台監督】加藤高

キャスト
【マギー】寺島しのぶ 
【ブリック】北村有起哉 
【母親】銀粉蝶 
【グーパー】三上市朗 
【メイ】広岡由里子 
【牧師】市川 勇 
【メイド】頼経明子
【医者】三木敏彦 
【ビッグ・ダディ】木場勝己


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コメント 3

dezire

こんにちは。時々訪問させていただき、記事を楽しく拝見しています。
演劇もご覧になるのですね。寺島しのぶさんの舞台は私も興味があったので興味深く詠ませていただきました。演劇の生の舞台もいいですね。。
私は新国立劇場で、オペラ「アンドレア・シェニエ」を鑑賞してきました。
音楽も演出も素晴らしいと思いました。感想など書きましたので、
ぜひ読んでみてください。
http://desireart.exblog.jp/11545028/
よろしかったらブログにコメントを書き込んでくださると嬉しいです。


by dezire (2010-11-27 13:30) 

dezire

すみません。オペラ「アンドレア・シェニエ」のサイトの表示が誤っていましたので訂正します。大変失礼しました。
http://desireart.exblog.jp/11623156/


by dezire (2010-11-27 13:46) 

dezire

こんにちは。時々訪問していますが、時間があったのでブログをじっくり読ませて頂きました。オペラ「魔笛」「オテロ」 「アンドレア・シェニエ」バレエ「ペンギン・カフェ」など共通のものを観ていますね。演劇にも興味がありますが、時間的にそこまで余裕がなく、しばらくご無沙汰状態です。気にはしているので、新しい演目があるとコメントなどは読んでいます。
私は最近「メサイア」を聴きに行きました。感想やバッハの音楽との違いなどをブログに書きましたので、ぜひ読んでみてください。
http://desireart.exblog.jp/11662999/
ご興味があったらブログにご感想、ご意見などコメントを書き込んでくださると嬉しいです。

by dezire (2010-12-19 08:23) 

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