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新国立劇場 オペラ「トリスタンとイゾルデ」 [オペラぁ!]

ko_20002525_chirashi.jpgワーグナー作曲の「トリスタンとイゾルデ」は、
1865年バイエルン宮廷歌劇場で初演されています。

新国立劇場のオペラ芸術監督が、
若杉弘から尾高忠明に代わり、
シュトラウスと共に新監督が意欲的に取り上げたワーグナー作品、
2010年のシメに相応しい壮大な舞台でした。

休憩を含めて6時間近い舞台は、
暗く重たい空気が張り詰めた、
次元を超えた感じの不思議な世界を造形していました。

真水を張った舞台に浮かんだ木製のボロ船。
色彩も動きもない舞台で、
空に浮かんだ月のように淡く光る大きな太陽と、
水面の微かなさざ波が、
世の中の営みと時間の移ろいを感じさせます。

全編を貫く青く暗い光に包まれた舞台は、
ワーグナーのオペラが歌劇ではなく楽劇と言う通り、
愛と死の物語を、
甘美な弦楽と木管の豊饒な音楽で奏でられるものでした。
指揮はフランス・リヨン歌劇場の主席指揮者を務める大野和士、
この長丁場を弛緩する事なく、
情感たっぷりに東京フィルハーモニー交響楽団から、
ワーグナーの世界を引き出しました。

そして、それに応える歌手陣。
トリスタンを歌ったステファン・グールドは、
昨年の「オテロ」でタイトル役を歌った強靭な喉の持ち主。
存在感のある巨体が愛に苦悩する様は真に迫る迫力、
充実した低音から力強い高音まで、
全3幕をほぼ出ずっぱりで歌い切り、
最後は舞台に伏して、
本当に力尽きたようにも見えました。

脇役で大きく突出していたのはイゾルデの侍女ブランゲーネ役のエレナ・ツィトコーワ。
ストーリーの中でも、
死の薬を愛の媚薬に摺り替えてしまう物語を決定してまう役ですが、
木管を想わせる乾燥気味のまろやかな歌声は、
個性的で心に響くものがあり、
第2幕の表題役2人の禁断の逢瀬に警告を与えるシーンは、
主役にも勝る甘美で美しいものでした。

そして幕切れはイゾルデ役、イレーネ・テオリンの独唱。
オーケストラの演奏は、最高潮に達しますが、
厚い演奏を突き抜けるようなソプラノは感動的。
そして、
最後は客席に背を向けて水に入り、
太陽が赤いドレスを鮮やかに照らしながら奈落へと沈み、
同時にイゾルデの命も消えて静かに幕となります。

この静寂こそ「トリスタンとイゾルデ」の見どころと言えるかも知れません。


2010年12月25日 新国立劇場 オペラ「トリスタンとイゾルデ」
Richard Wagner:Tristan und Isolde

スタッフ
【指 揮】大野和士(Ono Kazushi)
【演 出】デイヴィッド・マクヴィカー(David McVicar)
【美術・衣裳】ロバート・ジョーンズ(Robert Jones)
【照 明】ポール・コンスタブル(Paule Constable)
【振 付】アンドリュー・ジョージ(Andrew George)

キャスト
【トリスタン】ステファン・グールド(Stephen Gould)
【マルケ王】ギド・イェンティンス(Guido Jentjens)
【イゾルデ】イレーネ・テオリン(Iréne Theorin)
【クルヴェナール】ユッカ・ラジライネン(Jukka Rasilainen)
【メロート】星野 淳(Hoshino Jun)
【ブランゲーネ】エレナ・ツィトコーワ(Elena Zhidkova)
【牧童】望月哲也(Mochizuki Tetsuya)
【舵取り】成田博之(Narita Hiroyuki)
【若い船乗りの声】吉田浩之(Yoshida Hiroyuki)

【合 唱】新国立劇場合唱団(New National Theatre Chorus)
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団(Tokyo Philharmonic Orchestra)


タグ:ワーグナー
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