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新国立劇場 オペラ「夕鶴」 [オペラぁ!]

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オペラ「夕鶴」は、
1949年に初演された木下順二の戯曲を一語一句変更しない条件のもと、
團伊玖磨の作曲で1952に初演されたオペラです。

内容は民話「鶴の恩返し」を下敷きにした愛と欲望、
そのせめぎ合いの物語。

「与ひょう」は、
近所の子供たちと無邪気に遊ぶ美しい妻「つう」のために、
夕餉を暖めたりする心やさしい純朴な田舎男。
村人「運ず」と「惣ど」にそそのかされて、
都で高く売れるという「つう」が織った千羽折をもう一度織ってくれと強くせがみます。
「つう」は、「金儲けがしたい」とか「都へ行きたい」とか、
人間たちの考える事がまったく理解出来ませんが、
最後の頼みと思い、
自らの羽を抜き、身を呈して千羽折を織ったものの、
「与ひょう」は、「織っている所を絶対に覗かない。」という約束を破ってしまい、
人間の姿で居られなくなってしまった「つう」は鶴となって空へ飛び立って行ってしまいます。

子供たちの合唱による遊び歌で始まり、
皆が鶴が飛び立つ空を見上げるシーンで終わるこのオペラは、
全編に郷愁が染み渡るしんみりとした日本らしさが溢れる作品で、
初演当初より世界中で上演され続けていて、
今や国内外での上演回数が何と800回を超えるという日本では異例のオペラ作品です。

上演前から紗幕の向こうで降る雪が時々キラリと光り、
聴衆を寒い雪国へと誘う演出です。
幕が開くと舞台一面は雪景色、
上手に床と壁1枚だけの小さな「与ひょう」の家があります。
登場人物は4人と子供の合唱8人のみで、
新国立劇場の大劇場はちょっと広すぎかも知れませんが、
その物足りなさも、田舎のうら淋しさに置き換えられます。
人影を背景に投影する演出も美しさの奥に淋しさを漂わせ、
ますます郷愁を駆り立てます。

「つう」を歌った釜洞祐子の歌声は美しい日本語の響きで、
その台詞さえ歌に乗って聞こえ、
「金、金、金・・・。」などと下世話になりそうな言葉も全く厭味に感じません。
また、
地面を摺るようなしなやかな身のこなしで、
人間離れした別次元の役柄に成り切っていました。

和のモチーフがふんだんに盛り込まれた音楽、
東京交響楽団を指揮したのは高関健。
木管や打楽器などの日本的な要素を効果的に引き出し、
途切れのない郷愁に満ちた物語を創り上げていたように感じました。


2011年2月4日 新国立劇場 オペラ「夕鶴」

<スタッフ>
指揮 : 高関健
演出 : 栗山民也
美術 : 堀尾幸男
衣裳 : 植田いつ子
照明 : 勝柴次朗
振付 : 吾妻徳彌
舞台監督 : 大澤裕
<キャスト>  
つう : 釜洞祐子
与ひょう : 経種廉彦
運ず : 工藤博
惣ど :  峰茂樹

合唱 : 世田谷ジュニア合唱団

管弦楽 : 東京交響楽団

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