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村上春樹「1Q84」 [ブックぅ!]

やっと読み終わりました。
重たい本を持ち歩き、読んでない時もその重みを感じながら、
「1Q84」の3冊に馴染んだ1ヶ月あまりを過ごし、
逆に読後は何だか手持ち無沙汰です。
孤独に暮らす主人公の「青豆」と「天五」、二人は最後に結ばれますが、
同じく読書という孤独な作業を続けた読者は、
拠り所を失って社会に放り出されて更に孤独。
他の登場人物がその後どうなったのかも不明、
そんなところに村上長編独特の心地よい喪失感があるのかも知れませんが。

曖昧な物語の進行に、ディテールが冴え、
ついつい先を読み急いでしまうストーリー。
醜い容姿の牛河が汗を拭くハンカチを気の毒に思ったり、
自分の両手を初めて見るもののように眺めとか、
物事の描写が的確かつ独創的で、
感情表現の多彩さも魅力的です。

作者は30歳の天吾になりきって、
10歳年上の人妻を情婦とし、
17歳の少女とも性交渉に及ぶなどもはや犯罪的、
看護婦のアパートで夜を明かしたりと、
60歳の村上オヤジの妄想は爆裂し、
もはや躊躇するものは何も無いよう。

2人が結ばれる結末ははなはだ短絡的にも思われますが、
そこに今年取り壊しになる、
バブル時代の象徴だった超高層の赤坂プリンスホテルを持ってきたところに、
村上春樹が想う「失われた時を求めて」があるのでしょうか。

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