近藤史恵「カナリヤは眠れない」

次々にまわって来る「読みまわし文庫」から！

久しぶりに面白い本を書く作家を発見、
一気に読み飛ばしてしまいました。

タイトルにも惹かれましたが、いわゆるカードホリックと言われる、
クレジットカード中毒など、依存症がらみの現代病テーマ設定や、
中毒者か雑誌編集者か整体師か、
誰が主人公かはっきりしないところや、
現代小説に保険金詐欺・殺人未遂などの、
ミステリー要素を含ませたり意外性たっぷりです。

バラエティに富んだ登場人物が、
それぞれ親しみを持って描き分けられ、
背負い込んだ過労やストレスを場末の無愛想な整体師が、
悩みを聞きながら直してしまうところなど、
読んでいる本人も何だかすっきりしてしまうのが不思議です。

また、人間関係をついつい深読みしてしまう女性心理や、
短絡的行動で自爆自棄に走る男の行動など、
それぞれの心理描写になかなか唸らせるものがあります。

「ワープロ」という言葉が出て来たのでいつごろの作品かと思ったら、
平成11年で13年も前の作品でしたが、
現代においても全く遜色のない内容で読者を誘う１冊でした。