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新国立劇場 オペラ「三文オペラ」 [オペラぁ!]

spo.jpg新国立劇場の地域招聘公演。
今年は東京二期会との共催で、
関東でも馴染みのある、
びわ湖ホールを招いての公演。
このホールに行った事がありませんが、
2000年頃だったでしょうか、
隣に建つ琵琶湖ホテルには、
開業当時に泊まった事があります。
東京の歌舞伎座のような、
桃山様式の旧琵琶湖ホテルが閉鎖し、
場所を移して、
アメリカの建築家シーザー・ペリの設計で、
新築された建物は、
鮮やかな色彩の外装タイルに丸窓があしらわれ、
客船をイメージしたような外観が独創的でした。

びわ湖ホールの開場まもない頃だったと思いますが、
近江のヴォーリーズ建築を散策したり、
近江牛を堪能したりして楽しんだ記憶があります。

その後、びわ湖ホールの経営難がメディアで報道されたりしましたが、
今回、地域を上げて盛り上げようと、
頑張っている様子に触れて、改めて応援したい気持ちになりました。
にも係わらず、交通機関の混乱で、
始めて開演に遅刻という失態を演じてしまいました。
劇場に駆け込むと同時にモニターからお馴染みの「マック ザ ナイフ」が流れ、
まもなく場内へ案内されたものの、
第1幕終了まで最後部で約90分立見の刑を科せられてしまいました。

それでも新鮮味たっぷりのオペラ。
オーケストラと言うよりはバンドと言った方がしっくりきそうな演奏は、
コントラバスと言うよりはウッドベースと言った方がしっくりくる低音のリズムに乗って、
オルガンやバンドネオンが哀愁滲む旋律を奏でます。
なかでも、寺嶋陸也のピアノが素晴らしい。
作曲や指揮もするそうですが、まさしくピアノが語っているという感じでした。

この戯曲・オペラ自体1928年の作で、
1920年代の光と影にまみれる退廃芸術の香りが濃厚で、
機械時代の未来への期待とその反動の厭世主義が交錯、
ゲオルグ・グロッスが描くような紫煙くすぶる世の中を描いています。
それを装置で表現したのは増田寿子、
20年代の空気感を簡素な書割で忠実に再現しました。

多勢による歌手陣も当初は誰が何役か見分けるのが大変でしたが、
なかなか見応えのあるものでした。
皆さん若いようでしたが、
乞食商会のオヤジの抜け目ない胡散臭さなどはなかなか作れないだろうなぁと、
妙に感心してしまいました。

そして今回特筆すべきはちらしです。
これまで、オペラのちらしについては散々苦言を呈して来ましたが、
今回の素晴らしいチラシのデザインをしたのは何と学生だそうです。
プロが手掛けているにも係わらず安易な過去の舞台写真を引用したデザインや、
意味不明な抽象デザインで本来の舞台の魅力が十分伝えられないものが多い中、
このちらしは、
闇の男と、翻弄される取り巻きの女性たちの主題を表現した上で、
何だか観てみたいと思わせる仕上がりになっています。
ホワイエには他の学生の作品を展示されていましたが、
他にも目を惹くものがいくつかありました。
ちらしの重要さと学生に目を向けた主催者の意識は大いに評価出来ます。
この姿勢を
新国立劇場も見習って欲しいです。


2013年7月12日 新国立劇場 びわ湖ホール招聘公演 オペラ「三文オペラ」
 
戯曲:ベルトルト・ブレヒト
作曲:クルト・ワイル
Kurt Weil : Die Dreigroschenoper
 
スタッフ
 
【指揮】園田隆一郎
【ピアノ】寺嶋陸也
【管弦楽】ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団
 
【演出】栗山昌良
【衣裳】緒方規矩子
【振付】小井戸秀宅
【照明】原中治美
【装置】増田寿子
【音響】小野隆浩(公益財団法人びわ湖ホール)
【舞台監督】菅原多敢弘
 
キャスト
 
【メッキー・メッサー】迎 肇聡
【ピーチャム】松森 治
【ピーチャム夫人】田中 千佳子
【ポリー・ピーチャム】栗原未和
【ブラウン】竹内直紀
【ルーシー】本田華奈子
【酒場のジェニー】中嶋康子
【スミス】西田昭広
【大道歌手】砂場拓也
【フィルチ】古屋彰久
【泥棒ウォールター】青柳貴夫
【泥棒イーデ】島影聖人
【泥棒ロバート】二塚直紀
【泥棒マシアス】林 隆史
【泥棒ジェイコブ】山本康寛
【娼婦ドリー】岩川亮子
【娼婦ベティー】小林あすき
【年寄りの娼婦】林 育子
【娼婦フィクセン】松下美奈子
【娼婦モリー】森 季子

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コメント 1

dezire

こんにちは。
時々訪問せ沙ていただき勉強させていただいています。
新国立劇場のオペラ「三文オペラ」 に行かれたのですね。
私も行きたかったのですが、予定が合わず行けませんでしたので、興味を持って読ませていただきました。

音楽がオーケストラと言うよりはバンドという感じということですが、演劇としての面白さもありそうで、やはり生で味わいたかったと改めて思いました。
私は「アイーダ」からオペラを聴いていないので、次の「リゴレット」まで欠乏症になりそうです。

私は、どちらかというと苦手だったブルックナーの生演奏を初めて聴いて、すごく感激しました。ブルックナーについてわかる範囲で感じた魅力について書いてみました。目を通して理解の誤りなどご指摘、ご指導いただけると感謝いたします。
by dezire (2013-07-18 14:29) 

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