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新国立劇場 オペラ「フィデリオ」 [オペラぁ!]

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新国立劇場のオペラ「フィデリオ」
今期が芸術監督最後になる飯守泰次郎の肝いりプロダクションで、
ワーグナーのひ孫にあたるカタリーナ・ワーグナーの演出。
新国立劇場では以前にも「フィデリオ」の別プロダクションがありましたが、
今回はあえて新制作。
飯守泰次郎は2013年にも日生劇場で「フィデリオ」を指揮しています。↓
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2013-11-24

そのひ孫ワーグナーの演出ですが、
なかなかダイナミックでセンスも良く見応えのある舞台でした。
4階建て監獄の舞台は地上2階と地階2階の構成で、
地上は看守等の管理エリア、地下1階は重要政治犯の独房、
地下2階は大勢の雑居房で幕開け時には見えませんが、
転回のタイミングで奈落からせり上がってきます。
新国立劇場の高いプロセニアムと、
舞台機構を最大限に生かした演出は大迫力です。

幾何学的に造られた壁や床段差なども計算尽くされた配置で、
フラットな面には自然な濃淡があって屋外とも屋内とも受け取れる、
ニュートラルな空間です。
そして、
壁の一部になっている厚みが20センチもありそうな扉を開けると、
扉の枠で切り取られた照明が壁に刑務所長の影を映すという趣向もありました。

序曲の間、地上に看守たちが人工芝を敷き、
その上に花を突き刺して舞台全面を花畑にします。
ともすれば陳腐な演出ですが、
脳天気であっけらかんとした情景描写は、
地下の牢獄のどろどろしたイメージの対象表現で、
それが、
物語が進んでいくと納得出来るいう仕掛けです。

刑務所長が囚人を閉じ込めるために、
1個づつレンガを積んで出口を塞いでしまったり、
囚人が床の石を剥がして下にある土を掘り起こしたり、
やることのない独房の囚人が壁にチョークで美しい絵を描いていったり、
センス良く面白いシーンがいくつもありました。

チョークの絵画は下描きをなぞっているのでしょうが、
暗い牢屋に美しい絵が出来上がっていく様子が秀逸で、
ちらしには「絵画:ゲイリー・ゴドビー」とクレジットされていましたが、
どういう作家の作品かは分かりませんでした。

歌の方は、
まず、フロレスタン役のステファン・グールドが断然です。
第1幕は地下牢では沈黙を守っていますが、
第2幕の第一声が強烈で、一気に観客を飲み込んでしまったようでした。

表題役のフィデリオに扮するレオノーレ役のリカルダ・メルベートも、
何度も着替えたり演技をしながらも充実の歌声でした。

この演出で一つ難点としては、
舞台が重層的に重なっているため、
舞台の高い所で歌うシーンが多々あるのですが、
高い位置で歌うと天井の反射音の効果がないためか、
声が届きにくいようで、
聴く席にもよるでしょうがソリストが、
オーケストラに負けてしまっているところがありました。
その点、
地下2階ににいる雑居房囚人コーラスの迫力は満点でした。

オーケストラも力が入っていたようで、
指揮者も芸術監督最後のプロダクションを自分で指揮して、
満足だったのではないでしょうか。


2018年5月30日 新国立劇場 オペラ「フィデリオ」
 
STAFF
指 揮 : 飯守泰次郎
演 出 : カタリーナ・ワーグナー (Katharina WAGNER)
ドラマトゥルク : ダニエル・ウェーバー(Daniel WEBER)
美 術 : マルク・レーラー (Marc LÖHRER)
衣 裳 : トーマス・カイザー (Thomas KAISER)
照 明 : クリスティアン・ケメトミュラー(Christian KEMMETMÜLLER)
舞台監督:村田健輔
 
CAST
ドン・フェルナンド : 黒田 博
ドン・ピツァロ :ミヒャエル・クプファー=ラデッキー(Michael KUPFER-RADECKY)
フロレスタン : ステファン・グールド (Stephen GOULD)
レオノーレ:リカルダ・メルベート(Ricarda MERBETH)
ロッコ : 妻屋秀和
マルツェリーネ : 石橋栄実
ジャキーノ : 鈴木 准
囚人1 : 片寄純也
囚人2 : 大沼 徹
 
合唱指揮:三澤洋史
合 唱 : 新国立劇場合唱団
管弦楽 : 東京交響楽団
 
芸術監督:飯守泰次郎

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