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二期会オペラ 「ウリッセの帰還」 [オペラぁ!]

ulisse_thumb.jpgオペラ「ウリッセの帰還」は、
同じくモンテヴェルディ作曲の「ポッペアの戴冠」発表の前年、
1641年にイタリア・ヴェネツィアで、
世界で始めて一般市民が、
入場料を払って楽しむために造られたと言われる、
サン・カッシアーノ劇場で初演されています。
ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」を題材にとり、
トロイ戦争に行ったきり帰ってこない主人公の王ウリッセと、
20年間貞節を守り続け苦悩の日々を送る王妃ペネロペの物語。
神に導かれて王は帰還、最後は再会を果たしめでたしめでたし。

今回、二期会の企画は「ニューウェーブオペラ」との事で、
17世紀にオペラ化された紀元前8世紀の物語を、
21世紀の楽器と、21世紀を担う二期会若手の声で上演?

先日新国立劇場で上演された「ポッペアの戴冠」は、
古楽器による演奏で、バロックの悠々とした音楽でしたが、
こちらは、
オーケストラにピアノ、オルガンやアコーディオン、
エレキギターにエレキベース、バンジョーなども使われ、
オーケストラピットをはみだした打楽器は左右の花道に、
上手にはティンパニーとタムタム、下手にはマリンバとヴィブラフォンといった感じで、
思いつく限りの楽器を並べたようですが、
朗唱中心の単調なストーリー展開に効果的に挿入され、
ピアノなど意外な響きで新鮮味を与えていました。
歌の方はちょっとニューウェーブ過ぎたか、
若さだけが強調され、
声、演技共に今ひとつといった感じで、
「神の力」で何でもありのストーリーと相まって、
学芸会風に見えてしまったのが残念でしたが、
ウリッセを歌った大沼 徹は、
若さを武器に堂々と役を物にした声で存在感を示していました。

そして、その学芸会と言ってしまった舞台演出は高岸未朝。
薄暗い舞台に色彩のない抽象的ハリボテの装置は、
今時の居酒屋チェーン店の内装のよう、
階段に布を掛ける趣向も、
学生がやりそうな安上がりな演出と感じましたが、
3時間を越える物語の進行で、
演出が歌を邪魔する事もなく、
装置や階段などを巧みに移動させ舞台を展開、
ハリボテも実は内部にステージが組まれていたり、
布にも実は、
王と王妃の秘め事が隠されていたりと、
終わってみれば、
なかなか良く出来た演出だったと思いました。


しかし、
ここの狭い劇場ホワイエの息苦しさだけは何とかしてもらいたい所、
出来れば行きたくない劇場の一つです。


2009年6月6日 二期会オペラ 「ウリッセの帰還」
CLAUDIO MONTEVERDI 「IL RITORNO D'ULISSE IN PATRIA」
開場:北とぴあ さくらホール
作曲:クラウディオ・モンテヴェルディ
編曲:ハンス・ウェルナー・ヘンツェ
台本:ジャコモ・バドアーロ(1641)
再構成:ハンス・ウエルナー・ヘンツェ(1981)

スタッフ
指揮 :高関 健  
演出 :高岸未朝  
装置 :二村周作  
衣裳 :櫻井利彦  
照明 :中川隆一        
舞台監督 :大澤 裕  
公演監督 :三林輝夫  
 
キャスト
天界の王神ジュピター(ジョーヴェ) : 菅野 敦
海神ネプチューン(ネットゥーノ) : 畠山 茂
女神ミネルヴァ : 大西ゆか
ジュピターの妻ジュノー(ジュノーネ) : 三本久美子
トロイ戦争の英雄ウリッセ(ユリシーズ) : 大沼 徹
ウリッセの貞節な妻ペネロペ : 杣友恵子
ウリッセの息子テレーマコ : 宮本英一郎
ペネロペの求婚者アンティノオ : 菅原浩史
同ピザンドロ : 櫻井 淳
同アンフィノモ : 園山正孝
同エウリマコ : 西岡慎介
ペネロペの侍女メラント : 醍醐園佳
ウリッセの羊飼いエウメーテ : 小林大作
求婚者たちの従者イーロ : 塚田裕之
ウリッセの乳母エリクレア : 吉田理絵
人間のはかなさ : 彌勒忠史
時 : 金子 宏
幸運 : 嘉目真木子
愛 : 村田ゆう子
善意と悪意(助演):神谷真士 植木達也 遠藤隆史 久保昌明 安田祥章 柳田将太

管弦楽:東京交響楽団


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コメント 1

operaview

残念ながら行けませんでしたので、ブログめぐりで感想を集めてます(笑)
by operaview (2009-06-12 20:08) 

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