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新国立劇場 オペラ「沈黙」 [オペラぁ!]

silence.JPG1年間に必ず日本のオペラをひとつ上演している新国立劇場。
今年は遠藤周作の小説が原作で、
松村禎三作曲の「沈黙」。
幕府によるキリスト教弾圧が激化する17世紀の長崎、
信念を持って忍び込んだ宣教師ロドリゴだったが、
拷問により死んでいく信者たちを救う事も出来ず、
救いを求める祈りも届かず神は沈黙するばかり。
最後は信者を救うために自ら踏み絵に足をする、というお話。
原作は小説と言いつつ、
かなりの史実と考証を重ねたリアリティーのある内容で、
ずっしりと重たく胸に響くものがあります。

その舞台の感想は「意外に良かった。」です。
物語を丁寧に読み込んだ台本で、
音楽も日本のオペラにありがちな民謡的なものでもなく教会音楽風でもなく、
旋律を押えて状況を音で表現していくような手法です。
純粋に音楽を聴くだけには向かないかも知れませんが、
舞台に乗ると下野竜也の力強い指揮も手伝い俄然迫力が出てきます。
また、そんな展開の中で、
迫害された貧しい農民の美しいコーラスが幻想的に響きます。
ロドリゴ役の小原啓楼はほぼ出ずっぱりで苦悩する若き宣教師を熱演、
神の救いはありませんでしたがプロンプターの助けはあったようです。

演出は新国立劇場演劇部門の芸術監督宮田慶子で、
オペラの初演出との事でしたが、
シンプルな構成でなかなか上手くまとめられていました。
傾斜の付いた回り舞台にモニュメント的な巨大十字架とせり上がったステージ、
あとは背景の映写や照明等でシーンを特徴付けていきます。
教会のステンドグラスや牢屋の格子などをさりげなく影のように床に映し出したり、
演出が出しゃばりません。
隠れキリシタンが集まる場所にどうして背丈の5倍も10倍もある十字架が立っているのか、
これじゃ役人から丸見えじゃないかという素朴な疑問もありましたが、
そこはまあ物語の象徴だし、
LAUDATE EUM(讃えよ主を)と刻まれていたとうオチもあったので納得です。
ただ信者が海の杭に縛り付けられて曝されるシーンでは、
もう少し踏み込んだ演出が欲しかったところです。

16場?ものシーンに切り刻まれて2時間余りに凝縮された、
ブツギレ感は否めませんが、
原作にある壮絶で圧倒的迫力は伝わってきました。


事前情報でホワイエに踏み絵の展示があるというので期待していました。
3点ほどあって、レプリカだったのは残念でしたが、
その他、往年が忍ばれる教会や風景などがたくさん紹介されていて、
是非、一度長崎を訪ねてみたいと思いました。


2012年2月16日 新国立劇場 オペラ「沈黙」
Matsumura Teizo : SILENCE

【脚本・作曲】松村禎三
【原作】遠藤周作

スタッフ
【指 揮】下野竜也
【演 出】宮田慶子
【美 術】池田ともゆき
【衣 裳】半田悦子
【照 明】川口雅弘
 
キャスト
【ロドリゴ】小原啓楼
【フェレイラ】与那城 敬
【ヴァリニャーノ】大沼 徹
【キチジロー】桝 貴志
【モキチ】鈴木 准
【オハル】石橋栄実
【おまつ】増田弥生
【少年】小林由佳
【じさま】大久保 眞
【老人】大久保光哉
【チョウキチ】加茂下 稔
【井上筑後守】三戸大久
【通 辞】町 英和
【役人・番人】峰 茂樹

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団


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メンズMBT Vizuri GTX

今年は遠藤周作の小説が原作で、
松村禎三作曲の「沈黙」。
by メンズMBT Vizuri GTX (2012-02-17 14:50) 

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