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新国立劇場 オペラ「ピーター・グライムズ」 [オペラぁ!]

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ベンジャミン・ブリテン作曲のこのオペラは、
第二次世界大戦終戦の年1945年にロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場で初演、
新国立劇場では来年で生誕100年の機会に上演となりました。

今回は1994年のベルギー王立モネ劇場のプロダクション。
演出がウィリー・デッカーと聞いて、
あの2008年の「軍人たち」↓
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2008-05-08
のスタイリッシュな舞台を思い出して、大いに期待していましたが、
期待どおり18年も前のものとは思えない新鮮で洗練された前衛的な舞台でした。

簡素な舞台は真上からの照明で鈍く銀灰色に光る床に、
奥へ向かって20度以上はありそうな勾配が付いていて、
その先端が途切れている事で、
灰色の床が漁村でその先は海を表現しているようです。
床には大きな黒い壁が2枚あるだけ、
その壁を動かす事で裁判所や教会など村の風景を作っていきます。
その他、酒場では2枚の赤い壁に印象的な切り込みを入れてドアにしたり、
ピーター・グライムズの小屋は2枚の緑っぽい壁と床に四角く照明を当てるだけで、
小さな住まいを表現、奥からは直接海へ下りられる仕掛けも気が効いています。

物語は、徒弟を死なせてしまった漁夫が裁判では無罪となったものの、
村社会からははじけ者にされてしまい、
次の徒弟をも死なせてしまった時には業務上過失致死とはいえ、
白い目で罪人を見るような村の空気に押し流されるように、
促されて海に出て自ら船を沈める悲しい結末に、
その知らせに村人は全く関心を示さないという、更に悲しい追い討ちを掛けて幕となります。
事件で何より恐れるべきは「判決」でもなく「真実」でもなく「噂話」という事でしょうか。
同性愛者だった作曲者の抑圧された心情も制作に影響しているように感じました。

その音楽は、
美しい旋律を聴かせるというよりは、
無調的音で状況を描写する手法でオルガンや通奏低弦がさりげなく挿入され、
力強いコーラスが息吹を与えています。

東京フィルハーモニー交響楽団を指揮したのはリチャード・アームストロング。
演劇的要素の多いこの作品の舞台の間を上手く音楽に乗せていて、
劇的なストーリーの進行に成功していたと思います。
主役のピーター・グライムズを歌ったスチュアート・スケルトンも、
粗野で孤高な漁夫を歌う力強いテノールに一抹の哀しみを含ませる、
見事な歌声でした。


2012年10月2日 新国立劇場 オペラ「ピーター・グライムズ」
Benjamin Britten : Peter Grimes

スタッフ
【指揮】リチャード・アームストロング(Richard Armstrong)
【演出】ウィリー・デッカー(Willy Decker)
【美術・衣裳】ジョン・マクファーレン(John Macfarlane)

キャスト
【ピータ・グライムズ】スチュアート・スケルトン(Stuart Skelton)
【エレン・オーフォード】スーザン・グリットン(Susan Gritton)
【バルストロード船長】ジョナサン・サマーズ(Jonathan Summers)
【アーンティ】キャサリン・ウィン=ロジャース(Catherine Wyn-Rogers)
【姪1】鵜木絵里(Unoki Eri)
【姪2】平井香織(Hirai Kaori)
【ボブ・ボウルズ】糸賀修平(Itoga Shuhei)
【スワロー】久保和範(Kubo Kazunori)
【セドリー夫人】加納悦子(Kanoh Etsuko)
【ホレース・アダムス】望月哲也(Mochizuki Tetsuya)
【ネッド・キーン】吉川健一(Yoshikawa Kenichi)
【ホブソン】大澤 建(Osawa Ken)

【合 唱】新国立劇場合唱団(New National Theatre Chorus)
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団(Tokyo Philharmonic Orchestra)

ベルギー王立モネ劇場からのプロダクション・レンタルでの上演

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