新国立劇場 オペラ「ホフマン物語」

新国立劇場の「ホフマン物語」は、2003年の初演以来２度目の再演。
今年７月には東京二期会でも同演目の公演がありました。
公演レビューはこちら→http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2013-08-01

今回フィリップ・アルローの演出は、
曲線を駆使した幾何学的舞台の表と裏で全く違うシーンを抽象的に再現。
蛍光色の衣装や様々に色を変える照明の効果で、
物語がテンポ良く展開します。
隙のない理詰め舞台という感じですがそのセンスはいまひとつピンと来ませんでした。

第１幕は劇場ホワイエのカフェ、螺旋スロープの向こうには緞帳が見えていて、
カフェの脇には楽屋口が３つ並んでいています。
各幕で悪役で登場するバリトンのマーク・Ｓ・ドスのバリトンは存在感があり、
早速、劇場でモーツァルトを上演中の歌姫からホフマン宛の恋文を買収、
その大きな体躯と豊富な声量で舞台を圧倒します。

第２幕はバレエ「コッペリア」のようなお話。
ゼンマイ仕掛けの人形にホフマンが恋をしますが、
幸田浩子の高低音を変幻自在に操る歌声もなかなかでしたが、
渦巻きをモチーフにした巨大スカートの衣装が超個性的で印象的。

第３幕は弦楽器職人の娘が歌を歌うと死んでしまう悲しいお話。
斜めに傾いたキューブのステージに大きな食卓テーブルが突き刺さったような舞台でしたが、
テーブルの上のこまごましたものも良く見えず・・・。

第４幕はヴェネツィアの高級娼婦がホフマンの影を手に入れるという話。
最後恋敵と決闘の途中に、従者が敵を一刺しして娼婦とゴンドラで逃げ去るというもの、
ホフマンと一緒に観客も出し抜かれた感じでした。
「ホフマンの舟歌」のソプラノとメゾソプラノの２重唱も美しく響きました。

第５幕は幕開けのカフェシーンに戻ってみんな酔いつぶれています。
恋文を買い取った悪役が恋人を連れ去ってしまい、ホフマンはピストル自殺。
ホフマンを慕っていた芸術の女神が最後にホフマンを獲得！・・・？

全体的にまとまりが良く、でも面白みに欠けるという感じでしょうか。

今日の同行者のミォさんは、風邪気味で体調不良。
４時間近い舞台と、
３つの完結した違う物語を挟んだ５幕の説得力のないストーリー展開に、
これでは「ゴフマン物語」だと言っていました。


2013年11月28日　新国立劇場 オペラ「ホフマン物語」
Jacqus Offenbach : Les Contes d’Hoffmann
ジャック・オッフェンバック

【指揮】フレデリック・シャスラン(Frederic Chaslin)
【演出・美術・照明】フィリップ・アルロー(Philippe Arlaud)
【衣裳】アンドレア・ウーマン(Andrea Uhmann)
【振付】上田遙(Ueda Haruka)

キャスト
【ホフマン】アルトゥーロ・チャコン＝クルス(Arturo Chacon-Cruz)
【ニクラウス／ミューズ】アンジェラ・ブラウアー(Angela Brower)
【オランピア】幸田浩子(Kouda Hiroko)
【アントニア】浜田理恵(Hamada Rie)
【ジュリエッタ】横山恵子(Yokoyama Keiko)
【ﾘﾝﾄﾞﾙﾌ／ｺｯﾍﾟﾘｳｽ／ﾐﾗｸﾙ博士／ﾀﾞﾍﾟﾙﾄｩｯﾄ】マーク・S・ドス(Mark S. Doss)
【ｱﾝﾄﾞﾚ／ｺｼｭﾆｰﾕ／ﾌﾗﾝﾂ／ﾋﾟﾃｨｷﾅｯﾁｮ】高橋淳 (Takahashi Jun)
【ルーテル／クレスペル】大澤建(Osawa Ken)
【ヘルマン】塩入功司
【ナタナエル】渡辺文智
【スパランツァーニ】柴山昌宣(Shibayama Masanobu)
【シュレーミル】青山 貴(Aoyama Takashi)
【アントニアの母の声／ステッラ】山下牧子(Yamashita Makiko)

【合　唱】新国立劇場合唱団(New National Theatre Chorus)
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団(Tokyo Philharmonic Orchestra)

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コメント 1

こんにちは。
つるりんさんも新国立の、「ホフマン物語」をご覧になつたのですね。
私も、「ホフマン物語」を鑑賞してきましたので、興味をもって読ませていただきました。
今回のこの否両論があると思いますが、軽妙なオペラッタ的な場面とシリアスなオペラ的場面が交錯していく舞台の中で、音楽の転換の切れ味は見事で聴きごたえのある音楽は良かったと思いました。
私も「ホフマン物語」の感想などを書いてみました。読んでみて頂き、ご意見、ご感想などコメントしてくださると感謝致します。


by dezire (2013-12-10 14:07)