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東京二期会 オペラ「トリスタンとイゾルデ」 [オペラぁ!]

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東京二期会の「トリスタンとイゾルデ」は、
ドイツ・ライプツィヒ歌劇場との提携公演でウィリー・デッカーの演出。

ウィリー・デッカーの舞台はミニマルで耽美的。
小説で言えば三島由紀夫の文学のように、1ページある内容を1行にまとめて、
それでも美しく豊かに物語を表現しているような感じです。
過去日本では2008年に新国立劇場で「軍人たち」、
2012年には同じく新国立劇場で「ピーター・グライムズ」、
世界的には2005年のザルツブルグ音楽祭の「椿姫」が、
ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場のレパートリーになっていますが、
いずれも無駄をそぎ落とした美しさの光る作品です。

今回の「トリスタンとイゾルデ」は上演時間5時間にわたる全3幕の舞台ですが、
ななめ45度に振ったキューブの簡素な舞台はほぼ転回はありません。
幕によってキューブを構成する1枚の床と2枚の壁の模様が、
第1幕では海を抽象的に表現した波模様、
第2幕では木々の葉を表したような緑の点描、
第3幕では金属質の床壁を円弧状に傷付けたような抽象模様、
背壁を時々動かして奥を見え隠れさせて奥行感を出し、
あとは照明の当て方や色の変化で場面を印象付けていきます。

小道具といえば小舟と蝋燭ぐらい。
小舟は向きを変えたりひっくり返したり2つに裂かれて壊れていたりして、
全幕通しで登場しています。
小舟は世の中の小さい存在で、
抗いがたい運命を象徴しているようにも感じました。

第2幕はトリスタンが剣で自ら目元を傷つけて幕切れとなりますが、
第3幕の幕前に公演監督が舞台袖で、
「トリスタン役のブライアン・レジスターは体調不良ですが最後まで出演します。」
というような話をしたあと、
幕開けから瀕死のトリスタン登場で、
何だか舞台と現実の区別が付かなくなるような不思議な感覚に落ち入りました。
最後トリスタンは舞台上で事切れますが、さぞ内心ほっとしていた事でしょう。
イゾルデ役の横山恵子は声量もあり、
ほぼ出ずっ張りの長丁場を堂々と歌い切った感じでした。
侍女ブランゲーネ役の加納悦子も小柄な体格とは対称的なしっかりした歌唱と、
毅然とした立ち振る舞いで存在感を示していました。

ヘスス・ロペス=コボスが指揮した読売日本交響楽団も、
奏が進むにつれて作品に引き込まれていくようなカオス的感じがしました。


2016年9月10日 東京二期会 オペラ「トリスタンとイゾルデ」

TRISTAN UND ISOLDE
台本・作曲:リヒャルト・ワーグナー
平成28年度文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)
ライプツィヒ歌劇場との提携公演
会場: 東京文化会館 大ホール

スタッフ
指揮:   ヘスス・ロペス=コボス
演出:   ヴィリー・デッカー
演出補:   シュテファン・ハインリッヒス
舞台美術:   ヴォルフガング・グスマン
照明:   ハンス・トェルステデ
音楽アシスタント:   角田鋼亮
合唱指揮: 大島義彰
演出助手:   家田 淳
舞台監督:   幸泉浩司
公演監督:   大野徹也

キャスト
トリスタン  :ブライアン・レジスター
マルケ王 : 清水那由太
イゾルデ : 横山恵子
クルヴェナール : 大沼 徹
メロート  : 今尾 滋
ブランゲーネ : 加納悦子
牧童  :  大野光彦
舵取り  : 勝村大城
若い水夫の声 : 新海康仁

合唱: 二期会合唱団
管弦楽: 読売日本交響楽団


タグ:ワーグナー
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