SSブログ

新国立劇場 オペラ「ワルキューレ」 [オペラぁ!]

無題.jpg
新国立劇場の今シーズンの幕開けはワーグナーの「ワルキューレ」
ニーベルンの指環4部作の第2部、
第1部の「ラインの黄金」は昨年も幕開けのプロダクションでした。
公演レビューはこちら↓
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2015-10-02
このワルキューレは3幕で上演時間5時間半にわたる大作、
ゲッツ・フリードリヒの演出は今回も簡素ながら、
緻密に考え尽くされた知的な舞台演出でした。

第1幕は斜めに傾いたフンディングの家、
外の嵐を表す不気味に鳴り響く通奏低音が徐々に緊張感を高め、
観る者の期待と不安をあおります。
がらんとした広い部屋で夫の帰りを待つジークリンデが、
ふっと、扉を開けると外は吹雪(上写真)、何とも印象的な幕開けの演出です。
幕切れでは背壁が倒れて外に広がる森が抽象的に表現されます。

第2幕は、
放射状に奥へ延びる鉄錆の塊が段差のある2枚の床を作り、
それが回転舞台になっている、というもので、
特にデザイン的に優れているとか、見て美しいという事はないのですが、
なぜか非現実的な世界に引き込まれそうな浮揚感があって、
どうにも説明しづらいのですが、これがこの演出家の特徴かもしれません。

第3幕は、
「ワルキューレの騎行」のシーンでは、
飛行場の滑走路のように床が線状に点滅し、
勇者が寝台に乗って運ばれて来ます。
このあたりの演出はちょっとどうかと思いましたが、
幕切れブリュンヒルデが炎に包まれるシーンは、
もちろん音楽の効果も大きいのですが鳥肌モノでした。
本物の火を使っているようにも見えました。
最後、だんだん降りてくる幕が床に付くタイミングでピタッと音楽が終わるのも、
何だか指揮者と気持ちが一緒になったような快感がありました。

ラインの黄金ではローゲ役を歌ったステファン・グールドが、
今回はジークムントを歌いました。
その巨体から絞り出すテノールは圧巻ですが、
双子の相手役ジークリンデ役のジョゼフィーネ・ウェーバーも負けてません。
そもそも美しい声の持ち主ながら相当な迫力です。
体形的にも双子の設定はなかなかフィットしています。

ヴォータン役のグリア・グリムスレイは春のサロメに続く再登場、
サロメほどのミステリアスさはなかったものの、
カミさんに頭の上がらないちょいワル親父のような、
人間くささを持った神さまの感じは良くでていました。

ブリュンヒルデ役のイレーネ・テオリンも新国立劇場の常連ですが、
絶叫になってしまいがちな難しい歌唱を、
無理なく自然に聴かせました。
フリッカ役のエレナ・ツィトコーワは前回のワルキューレ公演の再配役。

オーケストラはちょっと重たげ、
ワルキューレの騎行等、
もうちょっと軽快に突き進んで欲しかったところです。

この日も昨年に引き続き皇太子の列席があったのでしょうか。
幕前に2階席に照明が当たって拍手が起きていました。


2009年キース・ウォーナー演出の新国立劇場公演レビューはこちら↓
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2009-04-10

2016年10月5日 新国立劇場 オペラ「ワルキューレ」
Der Ring des Nibelungen "Die Walküre"
Music by Richard WAGNER

CAST
ジークムント:ステファン・グールド(Stephen GOULD)
フンディング:アルベルト・ペーゼンドルファー(Albert PESENDORFER)
ヴォータン:グリア・グリムスレイ(Greer GRIMSLEY)
ジークリンデ:ジョゼフィーネ・ウェーバー(Josefine WEBER)
ブリュンヒルデ:イレーネ・テオリン(Iréne THEORIN)
フリッカ:エレナ・ツィトコーワ(Elena ZHIDKOVA)
ゲルヒルデ:佐藤路子
オルトリンデ:増田のり子
ヴァルトラウテ:増田弥生
シュヴェルトライテ:小野美咲
ヘルムヴィーゲ:日比野幸
ジークルーネ:松浦麗
グリムゲルデ:金子美香
ロスヴァイセ:田村由貴絵

STAFF
指揮:飯守泰次郎
演出:ゲッツ・フリードリヒ(Götz FRIEDRICH)
美術・衣裳:ゴットフリート・ピルツ(Gottfried PILZ)
照明:キンモ・ルスケラ(Kimmo RUSKELA)
演出監修:アンナ・ケロ(Anna KELO)
演出補:リーッカ・ラサネン(Riikka RÄSÄNEN)
舞台監督:村田健輔

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
協力:日本ワーグナー協会
芸術監督:飯守泰次郎
フィンランド国立歌劇場(ヘルシンキ)の協力により上演

タグ:ワーグナー
nice!(6)  コメント(1)  トラックバック(0) 

nice! 6

コメント 1

dezire

こんにちは、
私もワーグナー『ワルキューレ』を鑑賞してきましたので、興味深く深く拝読させていただきました。
主要キャストの歌手陣は世界でも最高水準といいえるほど素晴らしく、日本ではワーグナー指揮の第一人者と言える飯守泰次郎さん指揮・東京フィルの演奏も含めて感動的な舞台だったと感じました。

私も『ワルキューレ』の舞台を解消した感想と魅力、ワーグナーや芸術監督・飯守さんの意図等について考察してみました。読んでいただけると嬉しいです。ご意見・ご感想などコメントをいただけると感謝いたします。


by dezire (2016-10-14 14:57) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0