東京二期会 オペラ「ばらの騎士」 [オペラぁ!]
東京二期会「ばらの騎士」は、
2014年イギリス・グラインドボーン音楽祭のプロダクション。
歌手は全て日本人ですが、
リチャード・ジョーンズの演出と聞けば観ない訳にはいきません。
8年前、2009年新国立劇場の「ムツェンスク郡のマクベス夫人」公演、
その斬新でダイナミックで知性の溢れる演出は強く記憶に残っています。
当時のレビューはこちら↓
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2009-05-04
今回の演出スタッフは、
衣装と照明は前回と同じですが、
装置がスタインバーグに変わっています。
が、派手な色彩に幾何学模様をあしらった床・壁が、
サイケデリックで幻想的な空間を演出、センス抜群です。
第1幕は若い騎士オクタヴィアンと不倫の一夜を過ごした元帥夫人の寝室が舞台、
通常は大きなベッドで夜明けの戯れを楽しむシーンで始まりますが、
ここでは夫人のベッドはなくバスルームでシャワーを浴びるところから始まります。
前奏曲ではベッドでの営みが暗示され、
幕が開いて、そのほてりをシャワーで洗い流すような知的にエロい演出です。
第2幕は夫人のいとこオックス男爵が政略結婚を図る新興貴族のファーニナル邸。
舞台の先端を一皮だけ残して全面を壁で仕切り、邸宅居間の前室とし、
女中たちが婚約者ゾフィーの着替えをさせています。
ゾフィーは操り人形のようで、まだ自分の自我や意思がない娘を表現しているよう。
前面壁に付いた扉を開け閉めすると豪華な邸宅内の様子が見え隠れします。
壁が幕のように上がると成金趣味の広々とした居間が現れ、
オクタヴィアンが婚礼の印である銀のバラを持って登場。
オクタヴィアンとゾフィーの恋が芽生える瞬間ですが、
お互いへの興味と恥じらいを上体の揺らぎで表します。
第3幕は料理店。
上の写真がそうですがセンスのいい店の個室のイメージでしょうか。
澄ました内装ですが、
壁のボタンを押すとソファの座面が手前に伸びてベッドに早変わり、
下心のあるオックス男爵は満面の笑み、聴衆は抱腹絶倒です。
オクタヴィアンがオックス男爵を誘惑して懲らしめるシーンも、
凝った仕掛けはなく使用人たちがゾンビのように腕を上げて動き回ります。
ここで1幕でも夫人の寝室にポツンと居て気になっていたのですが、
無言のおじさんがゾンビに交じって傍観しています。
プログラムを見てみると「フロイト」となっています。
同時代にウィーンを生きた心理学者を登場させる事で、
登場人物の心理をより客観的に見せようという意図でしょうか。
幕切れの甘美な3重唱も幻想的な空間と照明の効果で、
より以上に染み入るものがありました。
また、衣装も凝りに凝っていて、
わずか数分しか出番のない帽子屋さんの衣装がこんなに凝っていてもいいのか?
と思うぐらい独創的で美しいものでした。
元帥夫人を歌ったのはソプラノの林正子、
容姿端麗で堂々とした立ち振る舞いでしっとり感もあります。
オックス男爵は妻屋秀和、
日本を代表するバスですが貫禄と愛嬌がないと出来ない役、
また良く響く最低音がないと第2幕の幕切れシメられませんが、
余裕さえ感じさせました。
ゾフィーはソプラノの幸田浩子。
もはやマドンナ的存在ですが、
多少の愛嬌も振りまいて新たなゾフィー像を描けたようです。
オクタヴィアンはメゾソプラノの小林由佳、
表題役ですが、しっかりした歌唱で存在感を示しました。
セバスティアン・ヴァイグレの指揮で演奏は読売日本交響楽団、
大編成の迫力と厚みのある艶やかな弦楽に加え、
舞台との一体感が熱のように伝わってきました。
多分リチャード・ジョーンズの演出が、
音に合わせた動きを多く要求しているからじゃないかと思います。
そのリチャード・ジョーンズ、
サイケでカリスマ的人物をイメージしていましたが、
カーテンコールで見る大柄なジーンズ姿は、
こつこつと仕事に熱中する職人のような感じでした。
2017年7月26日 東京二期会 オペラ「ばらの騎士」
RICHARD STRAUSS [DER ROSENKAVALIER]
その斬新でダイナミックで知性の溢れる演出は強く記憶に残っています。
当時のレビューはこちら↓
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2009-05-04
今回の演出スタッフは、
衣装と照明は前回と同じですが、
装置がスタインバーグに変わっています。
が、派手な色彩に幾何学模様をあしらった床・壁が、
サイケデリックで幻想的な空間を演出、センス抜群です。
第1幕は若い騎士オクタヴィアンと不倫の一夜を過ごした元帥夫人の寝室が舞台、
通常は大きなベッドで夜明けの戯れを楽しむシーンで始まりますが、
ここでは夫人のベッドはなくバスルームでシャワーを浴びるところから始まります。
前奏曲ではベッドでの営みが暗示され、
幕が開いて、そのほてりをシャワーで洗い流すような知的にエロい演出です。
第2幕は夫人のいとこオックス男爵が政略結婚を図る新興貴族のファーニナル邸。
舞台の先端を一皮だけ残して全面を壁で仕切り、邸宅居間の前室とし、
女中たちが婚約者ゾフィーの着替えをさせています。
ゾフィーは操り人形のようで、まだ自分の自我や意思がない娘を表現しているよう。
前面壁に付いた扉を開け閉めすると豪華な邸宅内の様子が見え隠れします。
壁が幕のように上がると成金趣味の広々とした居間が現れ、
オクタヴィアンが婚礼の印である銀のバラを持って登場。
オクタヴィアンとゾフィーの恋が芽生える瞬間ですが、
お互いへの興味と恥じらいを上体の揺らぎで表します。
第3幕は料理店。
上の写真がそうですがセンスのいい店の個室のイメージでしょうか。
澄ました内装ですが、
壁のボタンを押すとソファの座面が手前に伸びてベッドに早変わり、
下心のあるオックス男爵は満面の笑み、聴衆は抱腹絶倒です。
オクタヴィアンがオックス男爵を誘惑して懲らしめるシーンも、
凝った仕掛けはなく使用人たちがゾンビのように腕を上げて動き回ります。
ここで1幕でも夫人の寝室にポツンと居て気になっていたのですが、
無言のおじさんがゾンビに交じって傍観しています。
プログラムを見てみると「フロイト」となっています。
同時代にウィーンを生きた心理学者を登場させる事で、
登場人物の心理をより客観的に見せようという意図でしょうか。
幕切れの甘美な3重唱も幻想的な空間と照明の効果で、
より以上に染み入るものがありました。
また、衣装も凝りに凝っていて、
わずか数分しか出番のない帽子屋さんの衣装がこんなに凝っていてもいいのか?
と思うぐらい独創的で美しいものでした。
元帥夫人を歌ったのはソプラノの林正子、
容姿端麗で堂々とした立ち振る舞いでしっとり感もあります。
オックス男爵は妻屋秀和、
日本を代表するバスですが貫禄と愛嬌がないと出来ない役、
また良く響く最低音がないと第2幕の幕切れシメられませんが、
余裕さえ感じさせました。
ゾフィーはソプラノの幸田浩子。
もはやマドンナ的存在ですが、
多少の愛嬌も振りまいて新たなゾフィー像を描けたようです。
オクタヴィアンはメゾソプラノの小林由佳、
表題役ですが、しっかりした歌唱で存在感を示しました。
セバスティアン・ヴァイグレの指揮で演奏は読売日本交響楽団、
大編成の迫力と厚みのある艶やかな弦楽に加え、
舞台との一体感が熱のように伝わってきました。
多分リチャード・ジョーンズの演出が、
音に合わせた動きを多く要求しているからじゃないかと思います。
そのリチャード・ジョーンズ、
サイケでカリスマ的人物をイメージしていましたが、
カーテンコールで見る大柄なジーンズ姿は、
こつこつと仕事に熱中する職人のような感じでした。
2017年7月26日 東京二期会 オペラ「ばらの騎士」
RICHARD STRAUSS [DER ROSENKAVALIER]
スタッフ
指揮: セバスティアン・ヴァイグレSebastian WEIGLE
演出: リチャード・ジョーンズ Richard JONES
装置: ポール・スタインバーグ Paul STEINBERG
演出補・振付: サラ・フェイ Sarah FAHIE
衣裳: ニッキー・ギリブランド Nicky GILLIBRAND
照明: ミミ・ジョーダン・シェリン Mimi Jordan SHERIN
音楽アシスタント: 森内剛
合唱指揮: 大島義彰
演出助手: エレイン・キッド 家田淳 太田麻衣子
舞台監督: 幸泉浩司
公演監督: 多田羅迪夫
キャスト
元帥夫人 : 林正子
オックス男爵 : 妻屋秀和
オクタヴィアン : 小林由佳
ファーニナル : 加賀清孝
ゾフィー : 幸田浩子
マリアンネ : 栄千賀
ヴァルツァッキ : 大野光彦
アンニーナ : 石井藍
警部 : 斉木健詞
元帥夫人家執事 : 吉田連
料理屋の主人 : 竹内公一
テノール歌手 : 菅野敦
3人の孤児 : 大網かおり 田崎美香 松本真代
帽子屋 : 藤井玲南
動物売り : 芹澤佳通
ファーニナル家執事 : 大川信之
合唱: 二期会合唱団
児童合唱: NHK東京児童合唱団
管弦楽: 読売日本交響楽団
タグ:シュトラウス
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