杉本博司の天空アート「江之浦測候所」 [アートっ!]
神奈川県の真鶴からほど近い小田原江之浦にある「江之浦測候所」は、
写真家で芸術家でもある杉本博司が、
建築、彫刻、歴史的造作物を大地に刻み込んだ芸術空間で2017年にオープン。
急峻な箱根外輪山を背にして相模湾を望む立地を生かし超絶景を創り出しています。
海沿いの通りからうねった坂道を登り、
駐車場から更に徒歩で少し上がるとまずこの「明月門」が目に入ります。
室町時代の鎌倉明月院の正門を移築したものです。
以前から自生している高木を借景としているので昔からある寺院のように見えます。
満開の桜が更に歴史的建造物を修景しています。
到着するとスタッフが、まずは右側の「待合棟」へと案内します。
軽快な建物は4面ガラス張りで、その外側には今にも折れそうな細い柱、
建築的にも見応えがあります。
アプローチの脇には「古設楽井戸枠」
ヒビが入っていますが、
北大路魯山人が設楽の旅で買い求めたものだそうです。
待合棟内部には、樹齢1000年を超える屋久杉の大テーブルが据えられています。
ここで施設の案内が配布されスタッフの説明があります。
左建物は「夏至光遥拝100メートルギャラリー」
海抜100メートル地点に建つ長さ100メートルの展示空間。
ギャラリー背面の屋外通路は真っすぐ海へ向かい水平線に吸い込まれそうな迫力。
内部は粗い大谷石の壁にゆったりとした作品展示、
対面は全面ガラスで屋外的な解放感です。
海へ真っすぐ伸びるギャラリー、脇は屋外作品を巡る散策路。
ギャラリーの最先端は跳ね出しのバルコニー、
相模湾のパノラマビュー。
ギャラリーの手前は地元根府川石の「浮橋」
自然肌の平滑面を持つ特徴を生かして踏石にしています。
高木の向こうには古代ローマ円形劇場を実測再現したもの、
その先にガラスで出来た「光学硝子舞台」があります。
「石舞台」の寄り付き石に入った裂け目。
「大官大寺の瓦」桜の花びらで埋まっています。
「冬至光遥拝隧道」
人ひとりが通れる長さ70メートルの鉄板のトンネル。
冬至日には朝日がトンネルを突き抜けるように計画されているそうで、
先の景色は空と海に二分されています。
床の石は「これより先に行くな!」という印。
トンネルの上はというと身も竦みそうな、でも絶景!
引いて見たところ。
門の上には「生命の樹 石彫大理石レリーフ」
ヴェネチアの商館ファサードに埋め込まれていたものだそうです。
下から見ると、菜の花畑に鉄の塊が突き刺さっているような景観、
その後ろに見えている白い格子は「光学硝子舞台」の骨組。
茶室へ向かう道に建つ「旧奈良屋門」
2001年に廃業した箱根宮ノ下の老舗旅館の別邸へ至る門。
門の脇にあるつくばい「明日香石水鉢」
「石造鳥居」と茶室「雨聴天」
鳥居は茶室から見ると相模湾を切り取る額縁のよう、
茶室は庇の屋根がブリキの波板で、
雨が降るとまさしく名前の通りになりそうです。
「厠」
正面右がトイレ、さりげなく修景されています。
危険いっぱいの敷地を見守る?スタッフ。
半纏の丸三角模様はOdawara Art Foundation Enoura Observatoryの頭文字、
丸と三角は意識の始まりである事から、
その原点へ立ち返る意味が込められているそうです。
2019年3月31日 「江之浦測候所」
https://www.odawara-af.com/ja/enoura/
https://www.odawara-af.com/ja/enoura/
所在地:神奈川県小田原市江之浦362番地1
TEL:0465-42-9170
主要用途:美術館・展示施設
建築主:公益財団法人小田原文化財団
構想:杉本博司
基本設計・デザイン監修:株式会社新素材研究所
実施設計・監理:株式会社榊田倫之建築設計事務所
施工:鹿島建設株式会社
特別支援:ジャパン・ソサエティー(ニューヨーク)
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