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オペラの森 「タンホイザー」 ゲネプロ [オペラぁ!]


2007年3月12日 東京文化会館 東京のオペラの森 「タンホイザー」 ゲネプロ

遠目に見える桜の枝の重なりが、
つぼみでほんのり赤く色付いて見える上野公園。

「東京のオペラの森」は、
近年日本でオペラをもって春を告げるイベントとして、
注目されてきていますが、
今年は機会があって、ゲネプロ公演を観せて頂きました。

ホワイエは本公演と見間違う程の熱気で、
今回のプロダクションへの関心と人気の高さを感じます、
これだけ入れば、本番に近い残響時間も得られたのではないでしょうか。

指揮の小澤征爾氏は、
「彼の前に楽譜はなく、ただ二本の腕があるだけ。」
といった感じで、
まさにその両手で音の輪郭を撫でるように、
愛情いっぱいの感動的な音楽を創り上げていました。

また特筆すべきはロバート・カーセン氏の演出、
どう現代に読み替えるかが注目の的になっていますが、
その独創的な主人公の設定は当初、小澤氏を始め関係者の猛反対を受けたそうです。

カーセン氏の観衆に媚びないその手法は、
照明も正面から照らされる事なく登場人物は常に影をまとい、
フランスから運んだという装置も、
段差や勾配を付けて立体感をだすといった仕掛けもなく、
光や影を投影する主張のない背景となり、
その上、観る人によっては目をそむけたくなるようなシーンもアリで、
賛否両論引き起こしそうですが、
一枚の画布を主人公の心の象徴として、
胸中の葛藤を深い洞察で上手く描いており、
前衛的かつ革新的で刺激に満ちた見応えのある内容だと感じました。

また、現代に持ち込まれた牧歌的風景描写などの、
都合良く翻訳された字幕にも、
さして違和感は感じませんでした。

若い歌手陣も脇役にいたるまでそれぞれの個性が、
メリハリを持って巧みに引き出されており、
その力量に加え、
80人を超えるコーラスと、50人近い助演の効果もあいまって、
厚みのある舞台に仕上っていると思いました。

本公演での評価が楽しみです。


↑東京文化会館前に築かれた砂の彫刻

第1幕、
竪琴を持ったタンホイザーがひざまずいて、
薄布をまとった官能の女神ヴェーヌスに帰郷を乞うシーンですが、
このイメージで観ると完全に裏切られます。


東京のオペラの森 東京文化会館
ワーグナー「タンホイザー」 (Wagner: TANNHÄUSER)

指揮: 小澤征爾 (Seiji Ozawa)
演出: ロバート・カーセン (Robert Carsen)
装置: ポール・スタインバーグ  (Paul Steinberg)
衣装: コンスタンス・ホフマン (Constance Hoffman)
照明: ロバート・カーセン/ ペーター・ヴァン・プラット (Robert Carsen/Peter van Praet)
振付: フィリップ・ジュラウドゥ  (Philippe Giraudeau) 
 
タンホイザー:ステファン・グールド (Stephen Gould)
エリーザベト:ムラーダ・フドレイ (Mlada Khudoley)
ヴェーヌス:ミシェル・デ・ヤング (Michelle DeYoung)
ヴォルフラム:ルーカス・ミーチェム (Lucas Meachem)
領主ヘルマン: アンドレア・シルベストレッリ (Andrea Silvestrelli)
ヴァルター:ジェイ・ハンター・モリス (Jay Hunter Morris)
ビーテロルフ:マーク・シュネイブル (Mark Schnaible)
ハインリッヒ:平尾 憲嗣 (Noritsugu Hirao )
ラインマール:山下 浩司 (Koji Yamashita )
 
演奏: 東京のオペラの森管弦楽団 (Tokyo Opera Nomori Orchestra)
合唱: 東京のオペラの森合唱団 (Tokyo Opera Nomori Choir)


追記

ロバート・カーセンと言えば、
昨年末パリで初演された氏の演出による、
レナード・バーンスタイン作曲の「キャンディード」が、↓
http://blog.so-net.ne.jp/turlinco/2007-01-07
2007年6月ミラノのスカラ座で公演予定されています。
風刺を交えた、ひねりの効いた楽しい作品なのですが、
こちらも演出で問題が起きているようです。↓
http://www.afpbb.com/article/1404813
ネットでのチケット発売日は4月20日。


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