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札幌室内歌劇場 オペラ「月を盗んだ話」 [オペラぁ!]

ko_20001678_chirashi.jpgカール・オルフ作曲の音楽劇「月」は、
グリム童話を題材に後半を作者自ら付け足した音楽劇、
1939年にバイエルンの国立歌劇場で初演されています。
オルフは2年前の1937年には中世の歌集を元に、
演奏歌唱と舞踏が融合する「カルミナ・ブラーナ」を発表。
ドイツでリヒャルト・シュトラウスのオペラ以降、
新たな音楽舞台の表現を模索し大成功を収めましたが、
「月」は大戦の影響で、
世界に大きく広まる事はありませんでした。
この「月を盗んだ話」は札幌室内歌劇場が、
「月」の語り手と村人4人を男性から女性に置き換え、
オーケストラを5人のアンサンブルに編曲、
日本語に訳詞して上演するものです。

↑挿絵とデザインが美しい公演ちらし、
新国立劇場の本公演もこのぐらいレベルの高いデザインが出来ないものか。

床壁天井とも真っ黒の新国立劇場の小劇場、
ステージを片側に寄せた客席配置で、
装置と言えるものは背面のコの字型に組んだ建設足場と、
中央に置かれた高さ50センチ程のステージだけ。
それに角材を組んで造った樫の樹と、
透明プラスチックの使い捨てコップをいくつも束ねて作ったような月が、
演出上の道具として配置されています。
ローコストながら、予算の少ない小劇場の知恵が詰まったシンプルな舞台です。
建設足場は予算削減で現地調達かと思いましたが、北海道からはるばる持って来たようです。

キャストも総勢20人程度に児童合唱団を加えた小編成ながら、
足場を使った上下の動きや照明効果も手伝って見映えします。
語り手と合唱団以外は生成りの白っぽく緩い衣装で、
見た目の美しさの他、簡素な背景で観る者に想像の余地を与えています。
大劇場で日本語上演をすると、
台詞は分かっても歌になると何を言っているのか分からない事が多いですが、
小劇場で反響も少ないせいもあってか、声もはっきり聴こえます。

また、演出にはかなり演技が入っていてミュージカル仕立てとも言えそう。
マイケルジャクソンの「スリラー」を思わせる死者の踊りや、
満面の笑顔で客に訴える様子など、
「そこまでやらなくても。」と思うところもありましたが、
その初々しさは観る者にさわやかな印象を与えます。

演奏はピアノ、ヴァイオリン、チェロ、フルート、キーボードのアンサンブル。
キーボードがチェンバロ、ハープ、パーカッションなどを担当しますが、
プリミティブな打楽器が魅力のオルフ作品のパーカッションが、
電子音と言うのは何とも残念でした。
が、
作品としては大切にしたい「愛すべき小品」に仕上がっていたと思います。

終演後には演出の中津邦仁が、
音楽評論家の東条碩夫氏を迎えてのオペラトークがありました。
手応え十分の満足感に浸る演出家が、
辛辣評論家の東条氏に上演の率直な感想を求めたところ、
「言おうと思えば沢山あるが、こういう場所では控えておきます。」
との事でした。
招待席で観たのだったら、その作品をこき下ろすわけにもいきませんからね。


2010年1月13日 新国立劇場地域招聘公演 
札幌室内歌劇場 オペラ「月を盗んだ話」
Carl Orff:Der Mond

小劇場
スタッフ
【原 作】グリム童話
【作 曲】カール・オルフ
【編 曲】岩河智子
【訳 詞】岩河智子

【芸術監督】岩河智子
【指 揮】柳澤寿男
【演 出】中津邦仁
【美 術】三宅景子
【照 明】奥畑康夫
【ヘアメイク】藤原得代
【舞台監督】八木清市

キャスト
【語り手】萩原のり子
【ペトルス】則竹正人
【4人の村人】石田まり子/渡辺ちか/窪田晶子/松田久美
【よその村の村長】石鍋多加史
【よその村の村人】浅里慎也/安田哲平/橋本卓三/新津耕平/原慎一郎/関口直仁
【よその村のこども】八千代少年少女合唱団
【自分の村の村人】倉本真理/土本麻生/堤摩泉/成田潤子/松嶋瞳/三浦志緒理/森千絵子
【居酒屋の女将】遊佐悦子

【室内楽】札幌室内歌劇場室内楽団
ピアノ:吉村美華子
ヴァイオリン:富岡雅美
チェロ:川崎昌子
フルート:蠣崎路子
キーボード:駒崎志保

主催:札幌室内歌劇場/新国立劇場
協賛:北海道国際航空株式会社
助成:日本芸術文化振興会/北海道文化財団/伊藤組100年記念基金
後援:札幌市/札幌市教育委員会
協力:日本オペラ連盟


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