SSブログ

東京二期会 オペラ「ドン・ジョヴァンニ」 [オペラぁ!]

dbn.JPG二期会の「ドン・ジョヴァンニ」はカロリーネ・グルーバーの演出。
序曲と同時に幕が開き、
嵐の音響が聞こえる大邸宅で寸劇が始まり、
何だか面白そうな予感。

執拗にドアを叩く音が続き、
執事がドアを開けると若い男女が雨宿りを求めて入って来ます。
アーガイル柄セーターに眼鏡の男は今時のオタク少年風で、
女はピンクの膝上ワンピースにハンドバッグでこちらも今時風。
びしょ濡れの2人は執事からタオルを渡され、
食事のもてなしも受けます。
しかし女性には手厚く奉仕する執事も男性にはぞんざい、
床に落とした料理もそのままお皿に載せて出してしまいます。
と、そのまま第1幕が始まり歌い出したのは執事で、実はこの人ドン・ジョヴァンニの従者、
若い男女も後に登場するマゼットとツェルリーナだったのが後で分かります。
ただの黙役でなかっただけではなく、
普通の2人が嵐のせいで愛と欲望の世界に足を踏み入れてしまったという設定のようです。
ところどころで紗幕に描かれた裸婦は官能の象徴?
ここは愛の女神ヴェヌスがつかさどる官能の世界で、
ドン・ジョヴァンニが放蕩の限りを尽くす狂気の異次元へと吸い込まれていくようです。

この演出、
同じように愛と官能を扱った作品で、
東京二期会が来春公演予定の「タンホイザー」の伏線になっているのでしょうか?

とにかく、このツェルリーナとマゼットにスポットを当てた演出は効果的。
200年以上も前のモーツァルトの古典を生き生きと蘇らせ、
現代にも通じる物語として描かれていました。
もともとツェルリーナは男をそそる役柄で、
しかも美しい曲はほとんどこの子が歌っているので、
スポットライトを当てれば映えるのも当然と言えば当然です。
今回の演出では出番でない所でも舞台に出ていて、
演じている方は大変だったかも知れませんが、
スカートから伸びた2本の足が愛嬌を振りまき古典の舞台を大いに盛り上げました。

また、この「ヴェヌス」演出でのテーマは「官能」?
この世界では人を見れば服を脱がす、見られればすぐに服を脱ぐ、
ちょっとやりすぎの感はありましたが、これは演出家の嗜好でしょうか。
終幕の晩餐に到っては、
食べ尽くすのは料理じゃなくて女性?
ここまで徹底すれば、それなりに納得してしまうという内容でした。

ツェルリーナを歌ったのは盛田麻央。
演出の役柄や衣装のせいもあったと思いますが、
舞台中で大いにに華やぎを与えていました。

そして唯一の男声高音ドン・オッターヴィオ役の今尾滋、
絞り出すように歌うテノールが個性的で、
とても印象的でした。
役柄的にはイマイチだったので他の役で観てみたいところです。

演奏は、会場の反響が少ないせいか、
すこし音に厚みが足りない感じがしました。


2011年11月24日 東京二期会 オペラ「ドン・ジョヴァンニ」

台本:ロレンツォ・ダ・ポンテ
作曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
会場:日生劇場

スタッフ
指揮: 沼尻竜典
演出: カロリーネ・グルーバー
   
装置: ロイ・スパーン
衣裳: メヒトヒルト・ザイペル
照明: 山本英明
演出助手: 家田 淳
   
舞台監督: 大仁田雅彦、飯田貴幸
公演監督: 三林輝夫 
 
キャスト
ドン・ジョヴァンニ : 宮本益光
騎士長 : 斉木健詞
ドンナ・アンナ : 文屋小百合
ドン・オッターヴィオ : 今尾滋
ドンナ・エルヴィーラ : 小林由佳
レポレッロ : 大塚博章
マゼット : 近藤圭
ツェルリーナ : 盛田麻央

合唱 : 二期会合唱団、びわ湖ホール声楽アンサンブル
管弦楽 : トウキョウ・モーツァルトプレイヤーズ
《二期会創立60周年記念公演》
平成23年度文化庁芸術振興費補助金(トップレベルの舞台芸術創造事業)
ライン・ドイツオペラ(デュッセルドルフ/デュイスブルク)との共同制作
平成23年度(第66回)文化庁芸術祭協賛公演
東京二期会オペラ劇場主催:公益財団法人東京二期会
共催:日生劇場[公益財団法人ニッセイ文化振興財団]
助成:東京都芸術文化発信事業助成

nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(3) 
共通テーマ:音楽

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 3