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新国立劇場 オペラ「ローエングリン」 [オペラぁ!]

lohengrin.jpg新国立劇場の「ローエングリン」は、
1997年の開場記念の演目として、
作曲者ワーグナーの実の孫が演出した、
プロダクション以来、久しく間をおき今回が2作目。
新制作の演出はマティアス・フォン・シュテークマン。
今年3月に同じく新国立劇場で、
ワーグナーの「さまよえるオランダ人」の
再演を果した演出家です。

黒く光る床と背景がモニターに埋尽くされた舞台は、
小型画面に映し出される映像に、
オブジェ的装置とスポットの照明効果で、
抽象的に演出されていました。
イマイチ説得力に欠ける部分も多くあるものの、
凝った衣装など斬新で見応えある所もあります。

開演前、劇場アプローチの赤ジュータンが取り去られて、
元の劇場の姿に戻ってすっきりしたと思っていたら、
第1幕の幕切れで、
奥舞台から赤ジュータンが手前に延びて来た時には、
「まさかこれは演出!」とドッキリしました。

夕方5時の開演で10時まで約5時間、
どっぷり浸かったワーグナーの音楽世界でしたが、
ワーグナー作品の中でもこのローエングリンは、全編が聴きどころの名作。
第二次世界大戦中にはヒトラーにドイツの戦意高揚に利用されたり、
負の側面もありますが、
その音楽の素晴らしさは時を越えて輝いており、
この長丁場でも観ていて集中の途切れる事がありません。
消え入りそうなピアニッシンモにも体が吸い込まれそうに感じます。
また、ワーグナー初期の集大成的作品とも言えるこの作品は、、
美しい音楽と共に、後期には見られない厚いコーラスが圧倒的です。
そして今回の舞台、
新国立劇場の合唱には相当な迫力で胸に迫るものがありました。
50人を超える整列した群集が奈落から競り上がってくる演出も圧巻、
動きに演者としてもう少し高い意識があれば更に評価も高まった事でしょう。

歌手は主役級の4人が総じて高レベルの歌唱、
中でも表題役のテノール、クラウス・フロリアン・フォークトは、
軽快な歌声なのに劇場を突き抜ける芯を持った響きで、
劇場を圧倒的に支配しました。

初日の第一幕終盤には、まさかの地震!かなりの揺れに客席にはざわめき。
舞台ではローエングリンが相手役エルザに、
「決して自分の名前は尋ねるな!」という緊迫したシーン。
エルザ役のリカルダ・メルベートは動揺して手で顔を隠し合唱達に顔を向けます、
その動作が咄嗟の反応なのか演技なのか分かりませんが、
次のローエングリンの台詞「私の話を聞いているのか?」が、
舞台と現実がシンクロして不思議な感覚に陥りました。
その後エルザは、飛び込み台のようなデッキを歩かされたり、
人一人立てる分の床で2メートル近くの持ち上げられたりと、
今度また地震が来たらと、気が気でなかっただろうと観ている方が心配になりました。

そんな5時間でしたが、
終わってみれば舞台と客席が一体となった達成感!
ホールは満場の喝采と沸き返る熱気に包まれました。


2012年6月1日 新国立劇場 オペラ「ローエングリン」
Richard Wagner : Lohengrin

スタッフ
【指 揮】ペーター・シュナイダー( Matthias von Stegmann)
【演 出】マティアス・フォン・シュテークマン(Matthias von Stegmann)
【美術・衣裳】ロザリエ(rosalie)
【照 明】グイド・ペツォルト(Guido Petzold)

キャスト
【ハインリヒ国王】ギュンター・グロイスベック(Günther Groissböck)
【ローエングリン】クラウス・フロリアン・フォークト(Klaus Florian Vogt)
【エルザ・フォン・ブラバント】リカルダ・メルベート(Ricarda Merbeth)
【フリードリヒ・フォン・テルラムント】ゲルト・グロホフスキー(Gerd Grochowski)
【オルトルート】スサネ・レースマーク(Susanne Resmark)
【王の伝令】萩原 潤(Hagiwara Jun)
【4人のブラバントの貴族】大槻孝志/羽山晃生/小林由樹/長谷川 顯

【合 唱】新国立劇場合唱団(New National Theatre Chorus)
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団(Tokyo Philharmonic Orchestra)


タグ:ワーグナー
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コメント 1

dezire

こんにちは。

私も、「ローエングリン」を鑑賞してきましたので、興味深く読ませていただきました。私は2時からの公演でしたが、夕方5時から10時までの約5時間の鑑賞はお疲れ様でした。新国立劇場の合唱はいつもながら迫力がありましたね。フォークトのローエングリンは素晴らしかったですね。声が甘く柔らかで包み込むような声量があり余裕をもって歌っていましたね。他の歌手もみんな力があり、演奏、合唱が一体となった充実した舞台で感動しました。私の時は地震がなくよかったです。

私も「ローエングリン」の鑑賞記を書いてみました。意見、ご感想などコメントいだけれると嬉しいです。
by dezire (2012-06-19 00:04) 

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