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新国立劇場オペラ研修所「フィガロの結婚」 [オペラぁ!]


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年に一度行われる新国立劇場オペラ研修所の終了公演の初日。
3年間の研修を終える16期生を中心とした今年の演目は「フィガロの結婚」
昨年の公演レビューはこちら↓
http://turlinco.blog.so-net.ne.jp/2015-02-21

毎年繰り広げられるフレッシュな若手の熱演が見所ですが、
低予算で工夫を凝らした演出も見もので、
今年の演出は粟國淳。
日本を代表する若手オペラ演出家で、
現在では新国立劇場オペラ研修所の主任講師を務めているようです。
が、
最近の彼の演出は、
それなりに費用は掛かっていそうだけど、
正道で面白味に欠けていて、
公演案内に「演出:粟國淳」とあると、
「今回はちょっと観るのやめとこうかな。」と思う程なのでしたが、
今回は久しぶりのスマッシュヒットと言えそうです。
この人、あまり予算を与えない方がいい舞台をつくるようです。

「フィガロの結婚」は伯爵の館で巻き起こる1日のドタバタを描いたものですが、
館の女中部屋に集まる使用人たちのストップモーションで幕が開き、
すぐに舞台が左にスライドして、
隣接する本編のフィガロ達の引っ越し先の部屋が現れます。
こんなふうにして、
左右2つの舞台がそれぞれのシーン合わせて展開していき、
空間的にも視覚的にも連動して、
切れ目なく物語が進行していきます。
その分、出演者は出入りのタイミングに苦心する事になりますが・・・。
左右の舞台を連動させる演出は時々見掛けますが、
横田あつみのシンプルながら計算し尽された装置と、
巧みな照明効果で、見応えのある舞台になっています。

その他には舞台上の家具やシーツなど簡素な小道具と、
背景は照明の当たる白い壁のみで、
手前に黒幕を上下左右させる事で、
自由に変形する奥行感のある背景の立体化に成功しています。

そして幕切れも、
登場人物11人の大団円で終わりますが、
その後ろに幕開けと同じような女中部屋のストップモーションが、
左からスライドしてきて幕になります。
館の共同体のなかで行われた顛末を暗示するような演出も秀逸で、
「粟國やばい!」ってところでしょうか。

で、主役は研修生なのですが、
まずはスザンナ役のソプラノ種谷典子。
軽い歌声でまさしく適役、
更に演技もよく出来ていて、
細かい心情表現が立ち振る舞いに自然に表れている感じです。

マルチェリーナ役の藤井麻美は、
発声も力強く強烈な個性表現で名脇役的、
プログラムによると15期の卒業生との事でしたが、
1年違うだけで存在感が断然違います。

伸びやかな女声陣に比べて男声陣はちょっと迫力不足気味。
フィガロ役はバスの松中哲平、
役柄に合わせ歯切れよく歌いますが、
抜け目のないお調子者の感じが表現しきれません。
伯爵役のバリトン小林啓倫も、
館を仕切る爵位持ちの余裕が感じられないのが残念です。

今回はコーラスに現役の大学生を起用し、
今まで以上に舞台に新鮮さと緊張感を与えています。
初日という事もありますが、
全力投球の意気込みが感じられる舞台に、
装置、照明を含めた端正な演出が加わって、
もう1回観てもいいかな、と思わせる舞台でした。


2017年2月19日 新国立劇場オペラ研修所「フィガロの結婚」
Wolfgang Amadeus Mozart:"Le Nozze di Figaro"

スタッフ
【指揮・チェンバロ】 河原忠之(オペラ研修所音楽主任講師)
【演出・演技指導】粟國淳(オペラ研修所演出主任講師)
【装置】横田あつみ
【照明】稲葉直人(ASG)
【衣裳コーディネーター】加藤寿子
【舞台監督】髙橋尚史

キャスト
【フィガロ】松中哲平(16期)
【アルマヴィーヴァ伯爵】小林啓倫(16期)
【バルトロ】氷見健一郎(18期)
【スザンナ】種谷典子(16期)
【伯爵夫人】飯塚茉莉子(16期)
【ケルビーノ】高橋紫乃(17期)
【マルチェッリーナ】藤井麻美(15期)
【バジリオ】岸浪愛学(16期)
【ドン・クルツィオ】水野秀樹(17期)
【アントニーオ】山田大智(12期)
【バルバリーナ】砂田愛梨(18期)
【花娘Ⅰ】宮地江奈(18期)
【花娘Ⅱ】吉田美咲子(18期)

【管弦楽】新国立アカデミーアンサンブル
【合唱】東京音楽大学

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