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新国立劇場 オペラ「松風」 [オペラぁ!]

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日本の伝統芸能の「能」のオペラ化。
細川俊夫の作曲で前衛舞踏家サシャ・ヴァルツの演出で、
2011年にベルギーのモネ劇場で初演、
今回の新国立劇場公演が日本初演です。

物語は、
須磨の浦を訪れた旅僧が1本の松に目と留めます。
それは数百年前に在原行平を愛した松風と村雨という姉妹の墓標だった。
眠りについた僧の前に汐汲み女が現れるが、
それは松風と村雨の霊だった。
二人は松の木を行平と思い込み半狂乱となる。
僧が目を覚ますとそこにはただ松を渡る風が残るだけだった。
という、哀しい話。

まずはその伝統芸能を前衛芸術に昇華させた舞台が素晴らしい。
演出は舞踏家のサシャ・ヴァルツですが、
無駄をそぎ落とした肉体に同調するような簡素な舞台。
糸を縦横無尽に張り巡らせ、
その背面で重力を無くしたように自由に肢体を浮遊させる人達、
エッチングによる銅版画のような硬質で端整な美の表現です。

後半は9本の柱を格子に組んだだけの舞台で、
15人程のダンサーがペアを組んで微妙な領域感を出しながら、
姉妹の霊の狂気を演出、
僧が眠りから覚める幕切れでは、
長さ2メートルもありそうな大量の松葉が天から降ってきます。

細川俊夫の音楽は、
波の音や風の音を取り入れた自然に寄り添うゆったりとした音楽に、
和を思わせる打楽器や笛などを盛り込み、
神事の祝詞を思わせる無調の歌唱と共に進行、
観ながら聴く事でその世界が広がる感じです。

歌手とダンサーとコーラスが同じような動きをして、
一体感を出しているのも特徴的、
歌手も中吊りになったりダンサーにリフトされたりします。
踊らない人は圏外へ?
僧が途中オーケストラピットに入って歌う場面もありました。

久しぶりに芸術的レベルの高い舞台に出会った感じでした。


2018年2月16日 新国立劇場 オペラ「松風」
 
スタッフ
作曲 細川俊夫
指揮 デヴィッド・ロバート・コールマン (David Robert COLEMAN)
演出・振付 サシャ・ヴァルツ (Sasha WALTZ)
美術 ピア・マイヤー=シュリーヴァー(Pia MAIER SCHRIEVER)、塩田千春
衣裳 クリスティーネ・ビルクレ (Christine BIRKLE)
照明 マルティン・ハウク (Martin HAUK)
ドラマツルグ イルカ・ザイフェルト(Ilka SEIFERT)
 
キャスト
松風 イルゼ・エーレンス (Ilse EERENS)
村雨 シャルロッテ・ヘッレカント (Charlotte HELLEKANT )
旅の僧 グリゴリー・シュカルパ (Grigory SHKARUPA)
須磨の浦人 萩原 潤
 
音楽補 冨平恭平
ヴォーカル・アンサンブル 新国立劇場合唱団
管弦楽 東京交響楽団
ダンス サシャ・ヴァルツ&ゲスツ(Sasha Waltz & Guests)

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